安倍首相「内定率は過去最高」はいいトコ取りの目くらまし

2019/03/26
 日刊ゲンダイ

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超売り手市場バブル期のデータはなかったと渋々認めた(C)共同通信社

「昨年の12月1日時点の大卒者の就職内定率は過去最高」――。アベノミクスの成果を強調する際に最近、安倍首相が多用するお気に入りのフレーズだが、やっぱりおいしいトコ取りで根拠が薄弱だったことが分かった。

安倍首相が「過去最高」と胸を張るのは文科省と厚労省が合同調査する「大学等卒業予定者の就職内定状況」だ。確かに今年3月の大学卒業予定者の就職内定率が87.9%となり、過去最高だった。ところが、この統計にはバブル期(1986~91年)のデータが含まれていないのだ。

超売り手市場「バブル期」のデータはなかった

25日の参院予算委員会で立憲民主党の吉川沙織議員が、内定率調査について「97年3月の卒業生分からしか(データを)取っていない」「空前絶後のバブル期は、このデータは取っていない」と指摘。


「統計の使い方には留意すべきだ」と畳みかけた。すると安倍首相は「当然、統計を取り始めてから(過去最高だった)ということになるわけでございまして、それも踏まえて申し上げている」と眉間にしわを寄せ、渋々、バブル期のデータが含まれていないことを認めた。

超売り手市場だったバブル期の方が内定をもらった学生が多かったのは当然だ。吉川氏によると、安倍首相は冒頭のフレーズを今年に入ってから少なくとも9回、国会で繰り返したという。バブル期のデータがないのに「過去最高だ」と自賛するのは、ミスリードじゃないか。

「大学生の就職内定率が過去最高であることは事実で、若者の雇用が確保されていることは喜ばしいことです。しかし、空前絶後の売り手市場だったバブル期はこの調査が始まる以前のこと。若年者の人口が減少する中にあっては、リーマン・ショックのような特殊事情がなければ、就職内定率が高まる傾向にあること自体は不思議ではありません。総理が殊更に喧伝するようなものではないでしょう」(吉川議員)

文科省は内定率調査とは別に、「学校基本調査」で1948年以降の大卒者の就職状況を調査している。それによると、バブル期の86~91年、ピーク時の就職者は全体の81.3%。ところが、2018年は77.1%と下落している。しかも、学校基本調査が大卒者への全数調査であるのに対し、内定率調査は抽出調査。有利な数字をあえて利用したなら、またぞろアベノミクス偽装と批判されても仕方あるまい。