6月の成長戦略がダメならアベノミクスは失敗する

ダイヤモンド・オンラインより転載 2014425  
オバマ米大統領の来日もあり、最近の経済政策絡みの報道はTPPばかりですが、その陰でもっと憂慮すべき事態が起きつつあります。安倍政権は6月に新しい成長戦略を策定する予定ですが、ここ最近の政策絡みの動きを見ている限り、本当に大丈夫だろうかと不安にならざるを得ないのです。 
必要なのは産業政策ではなく構造改革
  そもそも、成長戦略として必要なのは、政府が民間企業に手取り足取り関与する産業政策ではなく、逆に民間企業を突き放して自分で頑張らせる構造改革です。政府の支援ばかりを当てにしている民間企業が強くなるはずないし、交付税ばかり当てにしている自治体が地元経済を活性化できるはずないからです。
  ところが、安倍政権が昨年策定した成長戦略は産業政策がその大半を占めたため、海外の投資家や専門家がまったく評価せず、昨年半ばから今に至る日本の株価の低迷につながっています。

一方で、構造改革としてやるべき政策は明確です。岩盤規制の改革(医療、農業、教育、雇用制度などでの規制改革)、法人税減税、TPP参加を筆頭とした自由貿易、道州制を含む地方分権と、これまでずっと必要性が言われ続けているのに実行できていない改革をやればいいのです。即ち、産業政策中心の昨年の成長戦略は失敗であった一方、構造改革でやるべき政策は既にリストアップできているのですから、6月の成長戦略はそれをやるかやらないかだけなのです。 

経産省の産業政策への執着
 ところが、また経産省が余計なことを始めました。
  そもそも昨年の成長戦略の失敗の原因は、官邸で大きなプレゼンスを持つ経産省が、産業競争力強化法という中身も効果もない産業政策をその中心にすることに固執したからです。実際、この法律を評価する声などありません。報道によると、その経産省が、民間有識者を集めた“日本の「稼ぐ力」創出研究会”なるものを立ち上げ(今日425日に第1回を開催)、6月の成長戦略に向けて、企業の収益力を高める方策を取りまとめるとのことです。
こういう民間人を集めた審議会や研究会は、所詮は役所がやりたい政策をオーソライズする隠れ蓑に過ぎないし、実際に委員のメンツを見ても族学者や族財界人ばかりです。産業競争力強化法の失敗に懲りずまた余計な産業政策を成長戦略の中核にしようと狙っているのでしょう。もちろん、役所的には、産業競争力強化法を主導した経済産業政策局長が昨年交代しているので、後任者が自分の独自の政策を打ち出したいというのもあるのでしょうが、政府に稼ぐ力を上げる方法を考えてもらわないと稼げないような企業は潰れるべきであり、余計な産業政策をまた成長戦略の中核に据えても外国人投資家からより一層そっぽを向かれるだけです。 
国家戦略特区事務局の体たらく
  その一方、昨年の成長戦略の中で唯一海外でも評価されている政策である国家戦略特区の方は、動きが遅いと言わざるを得ません。そもそも、昨年の成長戦略が海外でまったく評価されていないことを認識している安倍首相は、1月末のダボス会議で「法人税を減税する」、「国家戦略特区のスキームを活用して、岩盤規制を2年で改革する」と宣言しました。いわばこの2つは国際公約になっているのです。
ところが、内閣府に置かれている肝心の国家戦略特区の事務局は、第一弾の地域指定を行なっただけで、岩盤規制を2年間で改革する具体的なスケジュールさえ示していません。それどころか、地域指定された東京都が特区の対象地域や規制改革の中身の双方であまりにやる気がないにも拘らず、その是正さえもしっかりとやっていません。業を煮やした特区諮問会議の民間議員が、東京都への不満をHP上で文書で公開したくらいの状況です。 
経団連の相変わらずの政府依存体質
  そして極めつけは経団連です。自らイノベーションを産み出すよりも政府に支援策をねだることばかりやっている経団連は、“日本の国際競争力調査”なるものの結果を415日に発表しました。 それを見ると、改革が必要な分野として、民主党政権時に主張していた六重苦の延長とも言えるような政府への要望ばかりをしています。税・社会保障負担を軽くしろ、FTAを締結しろ、規制改革しろ、電力料金安くしろ、為替水準を何とかしろ、イノベーション環境を何とかしろ(=研究開発で補助金とか減税しろ)と、おねだりのオンパレードです
  特に笑えるのは、労働の柔軟性(=従業員の流動化)は主張しながら、要望の上位10位にコーポレートガバナンスの強化(=経営陣の流動化)が入っていないことです。経団連に集う大企業の経営者たちは、従業員は流動化させたいけど、自分たちが流動化されるのは嫌だと言っているに等しく、さすが農協や医師会を上回る日本最大の抵抗勢力の本領をいかんなく発揮しています。 
6月の成長戦略がダメならアベノミクスは失敗
  しかし、関係者がこの体たらくで本当に6月の成長戦略は大丈夫でしょうか。このままでは、法人税減税は実現するでしょうが、ダボス会議でのもう一つの公約である岩盤規制の改革については中身ゼロとなり、それどころか国家戦略特区も初っ端から失速しかねません。
官邸は株価を非常に気にかけていると聞いています。それならば、当面の経済運営では6月の成長戦略こそが大きな鍵を握るのですから、その中身については役所間の調整に任せず、また経産省の作る出来の悪い産業政策を重用せず、官邸主導のトップダウンでやるべき構造改革に着手すべきではないでしょうか。やるべき政策の中身は既に明らかなのです。
6月に向けてそれが出来ないようなら、アベノミクスは金融と財政で一時的に景気を良くしただけで、結局は失敗だったという烙印を押されることになります。