AIの軍事利用 暴走止める規制を急げ
2026年5月6日 北海道新聞
ロシアのウクライナ侵攻やイスラエルのパレスチナ自治区ガザ攻撃で本格化した人工知能(AI)の軍事利用が歯止めを失っている。米国とイスラエルのイラン攻撃でも標的の識別や作戦立案に用いられ、小学校の誤爆まで起きてしまった。
AIには、事実に基づかない情報や倫理的に誤った結果をあたかも真実であるかのように出力する「ハルシネーション」のリスクがある。無責任につじつまを合わせるAIには人間の判断と関与が欠かせない。
とりわけ、自律的に標的を識別・選択し、攻撃する無人兵器「自律型致死兵器システム」(LAWS)は警戒を要する。すでに実戦投入され、遠隔のミサイル攻撃以上に殺傷の実感が薄れることで倫理観すら喪失しかねない状況にある。
AIが95%の確率で核兵器使用を選択したという模擬実験もある。国際社会は人間の安全と文明の存亡がかかっていることを自覚し、暴走を防ぐルール構築を急がなければならない。
軍事利用の規制は2014年から、特定通常兵器使用禁止制限条約(CCW)の枠組みで議論を重ねてきたが、法制化目前の民生用に比べ大きく遅れている。覇権を争う軍事大国が規制に消極的で、合意形成が難航しているためだ。
国連の政府間専門家会合が19年にまとめたAI兵器に関する国際的指針も、開発を優先する米国やロシア、イスラエルなどの反対で条約などの法的拘束力のある規制は見送られた。実戦使用の準備を整える前の規制は都合が悪いのだろう。身勝手極まりない。
第2次トランプ米政権が安全性を重視したバイデン前政権の大統領令を撤回すると、米グーグルは基本理念から軍事利用を禁じる条文を削除した。法規制に逆行する動きが顕著である。
米国防総省は、完全自律型兵器への転用などを禁じるAI企業アンソロピック社を政府契約の供給網から排除した。こうした強引な軍事優先の姿勢が敵対国の疑心を招き、AI軍拡競争を招く事態は極めて危うい。
国連のグテレス事務総長は今年のCCW再検討会議を法制化の期限と定めた。国際人道法の適用や使用判断における人間の責任の明文化は待ったなしだ。日本政府は安全保障関連3文書改定に向けた有識者会合でAI活用の検討を始めた。
故意に人をあざむく人工超知能(ASI)の登場も現実味を帯びる。倫理や危険性を軽視すれば、かえって安全保障の脅威となることを理解する必要がある。
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