不確実な時代の子ども 生きづらさ取り除きたい


2026
55日北海道新聞


社会の変化が目まぐるしい。人口減少もデジタル化も当初の想定を超えて加速している。 政府は次期学習指導要領の考え方で「変化が止まらぬ時代に生きる子どもは自らの人生をかじ取りできる力が重要」と示す。

 
ただその力を育ててくれるはずの教員も、ネットの有害情報から守る対策も足りず健康を損なう子どもは多い。不確実な時代の荒波に放り出され、生きづらさを感じていないだろうか。

 
きょうは子どもの幸福を図る「こどもの日」だ。尊厳を保てぬ子どもに大人はどう向き合えばいいのか、見つめ直したい。

 
深刻な自殺者の増加   

 
昨年、自殺した小中高生は過去最多の538人だった。2010年代から増加が続く。
この間、普及した交流サイト(SNS)の影響が指摘される。友人らと24時間つながることができるため、学校外でもネットいじめに遭うなど常に誰かの目を気にして、緊張を強いられるようになった。

 
気がかりな調査結果がある。
自殺対策に取り組むNPO法人ライフリンクは2月、ウェブ上でアンケートを行った。小中高生1215人が回答し「しんどい気持ち」の相談先を聞くと50%が生成人工知能(AI)を挙げた。自由記述欄には「否定しないで受け止めてくれる」「変な子と思われる心配がない」などの声が多数届いた。

 
一方、全体の6割がしんどい気持ちを周囲の人に「気づいてほしい」と答えた。法人は子どもが「自らSOSを出しにくいと感じている」と分析する。
自己肯定感が持てず、疎外されることを恐れ日々を過ごす子どもの姿が浮かび上がる。

 
AIは人の好む回答をするが思いやる感情はない。自殺願望を持つ若者にやり方を指南することもある。悩みを聞く相手は人であるべきだろう。
ただ教員不足は深刻で昨年度、公立学校で計4千人余りが未配置だった。教員の負担を解消し、保護者や地域も連携して子どもを守る必要がある。

 
外国籍の学び保障を

 
政府は深刻な人手不足を補うべく、外国人労働者の受け入れを加速させている。小中学生に相当する外国籍の子も24年度に過去最多の16万人となった。
外国籍の子の教育を重視する姿勢も掲げてきた。日本語指導の必要な児童生徒に小中学校が個別の指導計画を立てて、外部の支援員の協力も得て日本語を教える制度を設ける。支援員を学校職員に位置づけ処遇の改善を図ることも目指している。

 
だが実情は厳しい。支援員を学校に派遣する札幌のボランティア団体は「教員は忙しく、指導は丸投げされている」という。
深刻なのが小中学校にも外国人学校にも通わない「不就学」だ。24年度は千人を超えた。

 
東京外国語大の小島祥美教授は「そもそも外国籍の子どもを義務教育の対象外にしていることが最大の問題」と強調する。
政府は日本国籍の保護者に就学義務を課すが、外国籍の場合は希望があれば受け入れるという姿勢だ。保護者が小中学校への入学を申請し、教育委員会が「許可書」などを発行する手順をとる自治体が多い。

 
小島教授は「まずは外部の日本語教室で勉強してきて」などと言って受け入れない学校もあるという。「法的根拠が乏しいため担当者の裁量に左右されやすく、教育業務全般が『やらなくてもいいこと』になっている」
日本も批准する子どもの権利条約は国籍を問わず教育を受ける権利をうたう。外国人の増加は国の政策であり、子どもの成長にも責任を負うのは当然だ。

 
多様性認める環境に

 
問われるのは、子ども本位の教育を実践できるかである。
オホーツク管内大空町が21年度に開校した北海道大空高校は、単位制で定期テストはない。生徒が興味のある課題を主体的に探究する方針を掲げる。

 
生徒は全国募集し、今春の1年生36人中16人が道外からだ。中学で学校生活になじめなかった生徒も、昨年まで父の母国ペルーに住んでいた生徒もいる。
一方、希望する在校生は短期の海外留学ができる。これまで18人が世界各地を訪ねた。

 
大辻雄介校長は「学内外で多様な価値観に触れて、生徒は視野を広げる」と狙いを語る。
 横浜市出身の2年、和田陽菜(ひな)さんはそんな校風にひかれた。 中学時代、授業は頑張ったのに苦手なテストの点だけで評価されることが嫌だったという。

 
数字では測れぬ個性的な生徒もいた。だが否定的に見られる風潮があり「自分はからかわれないよう、みんなと一緒でいよう」と思うこともあった。
当時のもやもやは大空高で晴れた。「みんな違うのが当たり前で、それぞれ輝く何かがあると気付かされた」という。

 
画一的、排他的な基準で線引きせず、全てを包摂し尊重すれば子どもの生きる力は育まれる。そんな環境を整え、成長を支える社会でありたい。