公布80年の憲法論議 主権者として向き合おう

 

「時は来た」「行うべきは決断のための議論だ」。高市早苗首相は強い言葉で国会の憲法改正論議を後押ししている。主権者たる国民はどう向き合うべきか。憲法記念日に考えたい。 

高市

現行憲法は11月に公布から80年を迎える。基本的人権を包括的に保障する規定は先進的だったが、現代の感覚からすれば当然のことにもみえる。日本初の女性弁護士をモデルにしたNHKの連続テレビ小説「虎に翼」で脚本を担当した吉田恵里香さんは10代の頃、そんな印象を抱いていたという。
 


執筆が決まり憲法全文を読み直した。最も心に響いたのが、法の下の平等を定めた14条だった。過去の作品で性的マイノリティーを主人公にしたこともあり、さまざまな人が14条を支えに人権を守ろうと闘っていると痛感した。

性別や身分などによる差別の禁止は番組を通じたテーマとなった。
現行憲法の下、個人の尊重や幸福追求権を定めた13条を足がかりに、プライバシー権など「新しい人権」が確立した。

 

14条などを根拠に、障害者らを差別してきた旧優生保護法を違憲と断じる判決も出ている。自由や平等は当たり前のように見えるが、不合理を正す意思がなければ、憲法の理念を守り、発展させることはできない。

 

一方で、政治権力の側には最高法規を軽んじるかのような振る舞いが目立つ。高市首相は1月、天皇の国事行為を定めた7条を根拠に衆院を解散した。政権の都合で選挙を行うことには、解散権の乱用との批判がつきまとう。予算審議を短期間で切り上げようとした姿勢は、国会に監視機能を与えた財政民主主義をないがしろにするものだ。

 

安倍晋三政権下の2014年、政府は閣議決定によって集団的自衛権行使の一部容認に踏み切った。改憲に相当する方針転換にもかかわらず、主権者が国民投票で意思表示をする機会はなかった。