核ごみと南鳥島 「狙い撃ち」は問題がある


2026
415日 北海道新聞


原発から出る高レベル放射性廃棄物(核のごみ)の最終処分場選定に向けた文献調査が、東京都小笠原村にある南鳥島を対象に始まる見通しとなった。住民の間で風評被害や自然環境への影響に懸念の声も上がっていたが、渋谷正昭村長は「国が主体的に、かつ責任をもって判断すべきだ」として、事実上容認した。

文献調査は後志管内寿都町と神恵内村、佐賀県玄海町に続き
4カ所目となる。20億円の交付金をテコに調査に応じる自治体を募る「手挙げ方式」では対象地は広がらなかった。焦った国が南鳥島での調査を申し入れ、村はわずか1カ月余で実質的に受け入れた。

 
手挙げでも国主導でも、調査地はいずれも人口が少なく財政規模の小さい自治体だ。弱みにつけ込む狙い撃ちのような手法が科学的な選定プロセスにつながるのか疑問を禁じ得ない。
 南鳥島は村役場本庁舎のある父島から1200キロ離れ、自衛隊や気象庁など国の施設の職員を除いて一般住民はいない。太平洋プレート上にあり地震の恐れは少ないとされ、国は処分場適地に分類している。

 
一方で地下の岩盤には水を通しやすい石灰岩もあるとして、適性を疑問視する指摘もある。ほかにも皇居と同じという島の面積の狭さや海上輸送の安全確保など課題は多い。
だが一度文献調査を受け入れれば、実際に地面を掘削する概要調査、最終段階の精密調査へとなし崩しで進んでしまう懸念は寿都、神恵内と同じだ。

 
渋谷村長は寿都など先行3町村と小笠原以外の地域にも申し入れがあるまで、次のプロセスに進むかどうかの判断を示さないと言う。文献調査が実施されても処分場建設を決めたわけではないとの確約や風評被害対策を国に対し求めると述べた。

 
態度表明の前に、住民の声を丁寧にくみ取り議論を尽くすのが首長の責務ではなかったか。
 国は、処分場は候補地10カ所程度から絞り込むことを理想としている。今後は国主導の調査申し入れが続く可能性がある。

 
主体的な検討をせずに国にげたを預けた小笠原を前例とし、国が高圧的に調査受け入れを迫るようなことがあっては地方自治の本旨に反する。
地質学者などの有志グループは2023年、地震・火山国の日本で核ごみを地層処分できる適地はないとの声明を出した。

 
処分場の見通しもないまま無責任に核のごみを増やす原発回帰政策を改め、現在ある核ごみの処分方法については根本的に議論を仕切り直すのが筋だ。