高市自民と改憲 数頼みの議論許されぬ


2026
414日 北海道新聞

 

高市早苗首相は自民党大会で憲法改定を巡り「時は来た」と述べ、来年の大会までに発議のめどを立てる意向を表明した。大会は改憲が「死活的に求められている」とした結党70年の新ビジョンも発表した。

 
与党は衆院で改憲発議に必要な3分の2以上の議席を持つ。首相は期限を設定した上で「決断のための議論」を求めるとの強い表現を用いた。憲法が国家権力を縛る役割を担う立憲主義の原則を忘れてはいないか。

 
最高法規である憲法の議論は少数派の意見を取り入れ、幅広く合意を得ることが大前提である。巨大与党が数の力で強引に決めることは許されない。
しかも与党が目指す9条改憲や緊急事態条項創設は、平和主義や基本的人権といった憲法の根幹を崩しかねない。前のめりの姿勢はあまりに危うい。

 
改憲を結党以来70年掲げてきたというのは、自民党の事情に過ぎない。本当に「時は来た」といえる現状なのかは疑問だ。
新ビジョンは憲法前文の「平和を愛する諸国民の公正と信義に信頼し」との前提がロシアによる侵攻などで崩れているとし、改憲の理由に今後30年の日本の安全保障を挙げた。

 
自民党は現在、9条に自衛隊を明記する案を主張している。首相は衆院選の演説でも「憲法になぜ自衛隊を書いちゃいけないのか」と9条改憲を訴えた。
一方で先の日米首脳会談では中東への自衛隊派遣には憲法を含む法的な制約があることを伝えた。平和憲法が戦争参加への歯止めとなっていることを改めて内外に示したといえる。

 
首相は「国の理想の姿を物語るものが憲法だ」とも語った。ならば国際秩序が大きく揺らぐ今こそ、前文の理想や「正義と秩序を基調とする国際平和を誠実に希求」する9条の精神が求められているのではないか。

 
改憲反対や反戦を訴える市民集会が全国的な広がりを見せている。権力者が都合良く平和国家の歩みを覆してはならない。
自民党は衆参の憲法審査会への条文起草委員会設置を求めており、改憲原案の国会提出を目指す。与党は緊急事態条項創設案の提出を急ぐ方針だ。

 
衆院憲法審は与党が7割以上を占める。首相は衆院選まで立憲民主党議員が務めていた会長に、政治信条が近い自民党の古屋圭司氏を充てた。
与野党の合意を基本とする憲法審の運営は「中山方式」と呼ばれる。数頼みの議論を戒める先人の残した原則を引き継ぐべきだ。参院が少数与党であることも忘れてはならない。