再審制度見直し 冤罪救済する抜本改正を
2026年4月11日 北海道新聞
刑事裁判の再審制度を見直す刑事訴訟法改正案について、政府は今月上旬を目指していた法案提出を先送りした。自民党の法案審査で当初案に反発が相次ぎ、抜本的な修正を迫られたためだ。政府はできるだけ速やかな提出を目指す方針という。
特に問題視されているのが再審開始決定に対する検察官の不服申し立てだ。審理長期化を招いているとして批判が強い。政府は申し立てを制限する検討を始めたが、全面禁止すべきだ。
証拠開示の規定も不十分である。このまま成立すれば、改悪と言わざるを得ない。冤罪(えんざい)は国家による人権侵害だ。政府は冤罪被害者の救済を最優先にした修正案を示し、今国会で成立させなければならない。
超党派の国会議員連盟は昨年、検察の不服申し立て禁止や証拠の利用に制約を設けないことなどを定めた改正案を国会に提出し、衆院解散で廃案となった。政府案が不十分ならば、国会は再提出予定の議連案を審議し、制度改革を実現すべきだ。
現在の制度は裁判所が再審開始を決定しても検察が不服を申し立てれば再審請求審で争うことができる。申し立ては繰り返されることが多く、再審開始が遅れる要因となってきた。再審無罪となった袴田巌さんの姉ひで子さんは与党の会合に出席し、検察の不服申し立てについて「そういう法律があるから長くかかった」と禁止を訴えた。冤罪被害者とその家族らに共通する思いだ。
政府は不服申し立ての必要性について、三審制の確定判決が裁判所の1度の判断で揺らげば法的安定性を損なうと訴える。ただ判決に疑義が出れば正すのは当然だ。検察は公開審理の再審公判で判決の正当性を主張できる。反論は説得力に乏しい。
政府内では検察の不服申し立てについて、開始決定に重大な事実誤認がある場合に限るなど一定の制限を設けて維持する案も浮上する。しかし制限を加えても、検察の主張を裁判所が認めれば申し立ては可能となり、抜本的な改善策にはならない。
もう一つの焦点が証拠開示のルールだ。政府の当初案は、開示の範囲を限定し、再審手続き以外での使用を禁じる罰則付き規定を設け、批判を浴びた。袴田さんの再審請求審では犯行着衣とされた衣類のカラー写真が開示され、弁護団が支援者らと共有したことで救済につながった。開示の範囲を制限されればこうした対応はできない。証拠利用の制約は冤罪を訴える元被告の権利を侵害する。この規定も見直すべきだ。
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