小学館の姿勢 性加害者の擁護許されぬ
2026年3月15日北海道新聞
学びや文化の発展を担う出版社として、人権感覚が著しく欠如していると疑わざるを得ない。性加害歴のある漫画家の起用を続けた小学館のことだ。
札幌市内の通信制高校を卒業した女性が在学中、教員だった漫画家男性からの性被害で精神的苦痛を受け損害賠償を求めた訴訟で、札幌地裁は男性に1100万円の支払いを命じた。判決後、小学館は男性の性加害を把握しながら作品を掲載していたと発表した。加害者を擁護していたことになる。女性は深く傷つき今も苦しんでいる。小学館の対応は許されない。
訴訟で男性側は「同意があった」と反論した。一方、原告は性的目的を満たすため優しく手なずけるグルーミングの手口だったと主張し、判決も「男性が自ら優位に立つ関係を形成し性的欲求に応じさせた」とした。
同様の犯罪の多発を受け、2022年施行の「教員による児童生徒性暴力防止法」は同意の有無を問わず児童生徒との性行為を禁止した。「同意があった」との弁解は通用しない。被害を受けた女性をさらにおとしめたのが小学館の対応だ。
男性は20年、同じ女性への性加害で罰金刑を受けた。小学館の漫画配信サービス「マンガワン」編集部は男性の作品の掲載を中止した。その後、和解協議に加わった担当編集者が性加害の口外禁止などの条件を示した。女性は納得できず22年に提訴すると、編集部は男性を別のペンネームで新連載の原作者に起用した。
小学館は判決後、「起用判断に瑕疵(かし)があった」として連載の配信を停止し謝罪した。第三者委員会で検証するという。性暴力を引き起こした元タレントを擁護したフジテレビ問題とも構図が重なる。人権より漫画家から得られる利益を優先したも同然で悪質だ。
問題発覚後も後手の対応が続く。当初、社員らでつくる調査委員会で原因を究明するとしたが、複数の漫画家がマンガワンへの掲載中止を求めるなど非難が強まり、第三者委の設置へと軌道修正を余儀なくされた。
性犯罪で有罪になった別の漫画家を起用するなど、女性の人権を軽視した事案が他にも判明した。検証を要する項目は多い。昨年、新潮社の「週刊新潮」に差別的なコラムが載った。大手出版社で人権感覚が問われる問題が続いたことは深刻だ。
とりわけ小学館は子ども向けの書籍が評価されてきた。高校生の性被害を軽視し、信頼は失墜した。そのことを自覚し、検証を尽くす必要がある。
コメント