石油備蓄放出 インフレ抑制最優先に
2026年3月13日北海道新聞
中東の軍事衝突による原油供給不安を受け、高市早苗首相が週明けにも国内の石油備蓄を放出する方針を表明した。国際エネルギー機関(IEA)は加盟32カ国の協調による最大規模の備蓄放出を決めたが、それに先立つ対応である。
原油先物価格は週前半に約3年9カ月ぶりの高値となり、北海道内のガソリン店頭価格は一晩で最高値水準の1リットル180円台後半まで急騰した。石油は化学製品の原材料でもあり、供給減は世界的なインフレと景気後退を招く。IEA加盟国備蓄量の多くを占める日本は混乱回避の責務がある。
ただし抜本的解決には紛争終結しかない。国連安全保障理事会はイランによる周辺国攻撃に非難決議をしたが、同時に米国やイスラエルのイラン攻撃を止めさせる働きかけが重要だ。 高市首相は供給不安が長引けば「支援の在り方を柔軟に検討していく」と記者団に述べた。
日本は原油輸入の約9割を中東諸国に依存する。輸送の要衝ホルムズ海峡はイランが事実上封鎖しており、商船三井のコンテナ船も損傷を受けた。石油タンカー到着は今後滞る見通しで、暖房や電気代も含め値上げ懸念は高まる。「有事のドル買い」による円安もあり輸入物価全体が上昇傾向だ。
このままでは「令和の石油危機」に陥りかねない。各方面に目配りした政策が大切である。 日本は苫小牧東部など国内10カ所の国家備蓄基地と民間分を合わせ約8カ月分に及ぶ4億バレル超を保管する。4年前のロシアのウクライナ侵攻時には全体の数%程度を協調放出した。
今回は当面2割近くの45日分を放出するが、市場に対して効果的な供給を模索してほしい。 原油元売りへの補助金も再開してガソリンを1リットル当たり170円程度に抑える方針だが、小出しでは行き詰まる。軽油や重油、灯油も含めた対策を見据え、新年度予算案組み替えも視野に入れる必要がある。
第1次石油危機の1973年度予算は列島改造論の田中角栄首相による積極財政だったが、物価高騰対策で公共事業を遅らせる歳出抑制に転じた。また第2次危機の79年以降には、日銀がそれまでの景気との両にらみから「物価重視」を明確にして利上げを進めた。企業活動にはマイナスだが物価安定を優先したという。
高市首相が掲げる積極財政はインフレを助長し円安を促す側面が指摘される。過剰投資を見直し、物価安定と暮らし最優先に方針転換する時であろう。
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