福島事故15年の現在地 原発に依存せぬ社会追求を


2026
312日 北海道新聞


東京電力福島第1原発は、政府と東電が目指す2051年までの廃炉完了が見通せない。かつてない作業の困難さから完了には100年以上かかると指摘する専門家もいる。いったん過酷事故が起きれば、多くの住民が長期の避難を余儀なくされ、地域社会は事実上崩壊する。土地をかつての姿に戻すためには、膨大な時間がかかる。こうした原発の現実を福島第1は見せつけた。

 
にもかかわらず、政府は「原発の最大限の活用」を掲げ、原発回帰を加速させている。
高市早苗首相は先月の施政方針演説で、再稼働を加速するだけでなく、廃炉を決めた原発の建て替えに向けて「次世代革新炉の開発・設置についても具体化を進める」と踏み込んだ。

 
原発のリスクと、事故から15年を経た福島の現状を直視しているのか。
いまだ故郷に帰れない人が大勢いる事実を忘れてはならない。原発に依存しない社会をつくることこそ、悲惨な事故の教訓を生かす道である。

■廃炉工程の検証必要

 
福島第1原発は13号機が事故でメルトダウン(炉心溶融)し、溶け落ちた核燃料(デブリ)が880トンあると推計される。これまで試験採取できたのは、約0.9グラムにすぎない。
東電は昨年、デブリの本格的な取り出しについて、30年代初頭に着手する目標を37年度以降に先送りした。取り出した後のデブリの処理方法も未定だ。

 
廃炉の工程を明確に描かなければ、まちの再建から住民の帰還に至るまで、安心して復興計画を立てることができない。
首相はきのう、訪問先の福島市内で廃炉について、「国も前面に立ち、最後まで責任を持つ」と強調した。

 
政府と東電は現行計画を検証し、現実的な廃炉スケジュールを示すことが求められる。
東電は柏崎刈羽原発(新潟県)の再稼働を経営再建の柱に据え、1月に再稼働させた。今月18日には営業運転を再開する。だがここ数年、テロ対策の重大な不備など安全性への意識が疑われるトラブルが続いた。東電が原発を安全に運転できるのか、懸念は拭えない。

■規制委の審査十分か

 
福島の事故後につくられた新規制基準に合格して再稼働した原発は、全国で15基に上る。
規制委は新規制基準を「世界で最も厳しい安全基準」と強調する。その主張が揺らぎかねない事態が続いている。

 
1月に中部電力が浜岡原発(静岡県)の再稼働審査で耐震設計のデータを不正操作していたことが明らかになった。
外部通報がなければ不正を見抜けなかった規制委の責任は重い。これまで審査に合格した原発に同様の問題がないと言い切れるのか。すべての原発について、改めて調べるべきだ。

 
設置が義務づけられているテロ対策施設についても、規制委は設置までの猶予期限を事実上延長する方針を決めた。電力会社の要望を受けたもので、安全性を高めることにはならない。

 
北海道電力泊原発3号機は昨夏、規制委による12年に及ぶ審査の結果、新規制基準に合格した。北電は27年早期の再稼働を目指している。
北電が原発敷地外に予定する核燃料輸送船の新港建設は再稼働後になる。新港と原発を結ぶ専用道路の具体的なルートを含め、詳細はこれからだ。

 
ところが、これらは規制委の審査対象外だ。原発の敷地に限らず、敷地外や避難計画など原発の安全性に関わるあらゆることに目を光らせるのが、規制委の役割ではないのか。審査の在り方を見直す必要がある。

■再エネ拡大欠かせぬ

 
世論調査では、原発容認派が増えている。ロシアによるウクライナ侵攻や円安などによるエネルギー価格の上昇が影響したとみられる。
国際情勢や為替の変動に左右されないのは再生可能エネルギーである。悲惨な事故のリスクや、原発から出る高レベル放射性廃棄物(核のごみ)といった問題もない。

 
政府は昨年改定のエネルギー基本計画で40年度の発電量に占める再エネの割合を45割程度に引き上げる目標を掲げた。
しかし、再エネ導入の拡大には、逆風が吹いている。大規模太陽光発電所(メガソーラー)は、釧路湿原国立公園周辺など全国で環境などの問題が相次ぎ、政府は不適切な開発を防ぐ規制強化策を決めた。

 
洋上風力発電は、三菱商事が建設費高騰で3海域から撤退した。採算面がハードルになる。
こうした課題を前面に立って克服していくことこそ、政治の役割である。高市政権は昨年11月に経済政策の重点17分野を決めた。ここで掲げたエネルギー安全保障につながるのは、自給可能で脱炭素と住民に安心を保証する再エネだ。政府は政策的な資源を集中的に投入すべきである。