売春防止法改正 尊厳守る視点で議論を
2026年3月8日北海道新聞
法務省が売買春の規制に関する有識者検討会を設置し、近く初会合を開く。現行の売春防止法は、処罰の対象を公衆の目に触れるような勧誘やあっせんなど「売る側」の行為に限定しており、「買う側」は対象にしていない。
この不均衡はかねて疑問視されてきた。検討会では買う側も処罰対象に加えるかどうかが最大の論点となる。身体を売り買いの対象にする売買春は人の尊厳を損ねる。背景には貧困などの社会問題も横たわる。尊厳を守る視点に立ち、不均衡の是正に向けて議論を進めてもらいたい。
日本には性の売買が容認されてきた歴史がある。敗戦後、国連加盟に「人身売買及び売春からの搾取禁止条約」の批准が求められ、それを踏まえ1956年に売春防止法が制定された。売春を対価を受けて不特定の相手方と性交することと定義し、「何人も、売春をし、またはその相手方となってはならない」と定めている。
だが近年、悪質なホストクラブに多額の借金を背負わされた女性たちが東京の公園で売春の客待ちをしたとして摘発されるケースが相次いだ。昨年11月の衆院予算委員会で、買う側を規制できないのかとの野党議員の質問に対して、高市早苗首相が必要な検討を行うよう指示していた。
相手が未成年の場合は、児童買春・ポルノ禁止法ですでに処罰の対象となっている。検討会では法改正を視野に、買う側が公衆の前で声をかけて誘う行為や、買春行為そのものを処罰するかどうかなどが検討される見通しだ。
どんな行為をいかなる要件で取り締まるのかについて、きめ細かい議論が求められる。多くの国は売る側と買う側の両方を処罰対象とする。スウェーデンなどは売る側を「暴力の被害者」と捉え買う側だけを処罰する。性産業従事者の労働の自由を保障するとして売買春を非犯罪化したニュージーランドのような国もある。
一方、日本弁護士連合会は、売春の現場で暴行や強要の被害に遭っても訴え出にくくなっているとして、売る側を処罰する規定を法律から削除するよう求める意見書を出している。広い観点から規制のあり方の検討を深める必要がある。
貧困や虐待などさまざまな事情から売る側に立たざるを得ない女性も多い。そうした人たちを支える団体の声も聞き、より実効性ある保護の仕組みにつなげていくことも重要になる。
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