iPS細胞製品 患者救う着実な開発を
2026年3月6日 北海道新聞
厚生労働省の専門部会は、人工多能性幹細胞(iPS細胞)を使った2種類の再生医療等製品について、条件と期限付きで製造販売を了承した。厚労省は近く決定する方針で、今夏にも患者への使用が始まる。
iPS細胞は京都大の山中伸弥教授が2006年に作製を報告した。さまざまな種類の細胞をつくることができる。病気などで失われた組織を回復させる再生医療の進展が期待され、国も強く後押ししてきた。
今回、世界初の実用化となり患者から歓迎の声があがる。普及が進めば救われる患者は多く、意義のある一歩といえる。今回の了承は有効性を推定したもので、いわば「仮免許」状態だ。開発企業は安全性を含めた検証を継続する。これまでの蓄積を生かし、成果を確実なものにすることが求められる。
了承されたのは大阪大発ベンチャーのクオリプスが開発した重症心不全向けの「リハート」と、住友ファーマによるパーキンソン病治療用の「アムシェプリ」だ。治験を受けたそれぞれ10人未満の患者から症状の改善などが確認された。
いずれの疾病も既存薬で限界を感じている患者は多かった。今回の了承は大きな希望になったのではないか。がんなど他の病気で進められている再生医療の研究にも弾みとなろう。山中教授が12年にノーベル生理学・医学賞を受賞したこともあり、iPS細胞は広く注目されてきた。国も再生医療を成長戦略の柱の一つに位置づけ、10年間で総額1100億円の研究費を投じてきた。
今回の決定は国が14年に導入した早期承認制度に基づく。細胞を用いた再生医療製品は開発に時間を要するという課題を解消し、実用化を早める狙いがある。2社は7年以内に有効性や安全性を実証し、本承認を得なければならない。
この制度を巡っては既に条件付きの承認を得た再生医療製品が複数あるが、有効性が確認できないことなどから本承認に至っていない。今回の2製品の真価が問われるのはこれからだ。
2製品とも高額が予想されるが、公的医療保険の適用対象となり、患者の負担は一定程度抑えられる。本承認までの大規模な治験などの費用の一部は医療保険で負担される側面もある。開発を進める企業の責任はそれだけ重いと言える。
山中教授は「浮足立つことなく、科学的な慎重さを持ち着実に進めることが重要」と話す。産学連携を深め、一人でも多くの患者を救ってほしい。
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