欧州の安保再編 力頼みの対抗は危うい
2026年2月18日 北海道新聞
ドイツで開かれたミュンヘン安全保障会議は世界秩序の再編が不可避であることを浮き彫りにした。「力による平和」か、法の支配による解決か。とりわけ、2度の大戦の端緒となった欧州の動きは今後の世界秩序を占う試金石となる。
ドイツのメルツ首相は国際秩序は「もはや存在しない」と危機感をあらわにした。背景にウクライナに侵攻し、欧州と敵対するロシアの脅威と、北大西洋条約機構(NATO)への関与を弱めるトランプ米政権の消極姿勢があることは明らかだ。
気がかりなのは欧州の対応である。独仏首脳は米国に頼らない欧州の独自防衛強化に向けた決意を相次いで表明し、自立した核抑止「核の傘」構築に向け協議していることも公表した。
カナダでは制服組トップだった前参謀総長が核保有も選択肢と発言した。核拡散防止条約(NPT)体制を揺るがすような動きは断じて容認できない。軍拡や新たな対抗軸の成立は危ういと言うほかなく、それを招いているのが米国第一主義であることは論をまたない。
民間主催のミュンヘン会議は1963年、世界の首脳や閣僚らが対話による平和を目指して始まった。情勢が混迷する今こそ、軍事偏重に陥らず、欧州の伝統的な強みである外交による解決の道筋を探るべきだ。
欧州では徴兵制の復活や女性を対象に加える動きが加速している。ドイツでは18歳になる男性に適性検査を義務づけ、不足する場合は徴兵制の再開を検討する法案が可決された。欧州各国は冷戦終結後、削減した軍事費を社会保障などの「平和の配当」に振り向けた。再び、軍拡にかじを切れば、公共サービスの劣化は免れまい。
カナダのカーニー首相は世界経済フォーラムの年次総会(ダボス会議)で、新たな国際秩序の構築で危機に対応すべきだとして、ミドルパワー(中堅諸国)の結束を呼びかけた。目先の利益のため超大国に迎合することで安全を買う時代は終わったとの指摘は重い。
超大国やイスラエルなどの軍事的脅威に抗するため、民主主義と自由貿易の理念を共有する欧州や日本が連携しようという提唱は傾聴に値する。日本は中国を念頭に欧州との連携を深めるが、軍事的協力に偏れば財政難に陥るばかりか、地域の対立をあおるだけだ。
高市早苗首相は衆院選圧勝で政権基盤を強固にした今こそ、対米追従一辺倒から脱却し、多元的な対話によってアジアの安定を図るべきではないか。
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