対中改善探る欧州 「現実外交」を注視したい

カナダのカーニー首相と英国のスターマー首相が1月、相次いで中国を訪問した。両国とも首相の訪中は8年ぶりだ。それぞれ習近平国家主席と北京で会談し、経済関係の強化などで合意した。

欧州を中心に、中国との関係立て直しを図る動きが広がる。昨年12月には、フランスのマクロン大統領が訪中した。ドイツのメルツ首相も近く訪問すると報じられている。仏独は対中関係を重視してきたが、新疆ウイグル自治区の人権問題などを巡って関係が冷え込んでいた英国やカナダまで改善に動いた。その背景には、トランプ米大統領の存在がある。 

戦後の欧州は、安全保障で米国主導の北大西洋条約機構(
NATO)に頼り、経済でも米国市場の恩恵を受けてきた。トランプ氏は依存関係を逆手に取って、高関税の受け入れや防衛費の増額を迫る。一方、南北米大陸を含む西半球重視の「ドンロー主義」を掲げ、欧州への関与を低下させようとしている。

欧州が「米国一択」のリスクを低減しようと考えるのは当然だろう。選択肢の一つとなるのが中国だ。米国との貿易が停滞した場合に、輸出・投資の受け皿になると期待する。

カナダは大国に対抗するためのミドルパワー(中堅国)の連携を呼びかけ、支持を集めている。それでも中国との関係改善を急ぐのは、貿易の多角化や投資先の分散が大国をけん制するカードになり得るとの現実的な判断がある。

一方、中国には保護主義色を強める米国に対抗し、多国間主義を守る姿勢を印象づける狙いがあるとみられる。欧州に接近し、米欧が連携して中国への圧力を強める展開を避けたいとの思惑もうかがえる。大国との向き合い方を問われているのは日本も同様だ。 

台湾有事を巡る高市早苗首相の発言を機に、中国は日本への圧力を強めている。一方で、大国間取引を重視するトランプ政権が、同盟国である日本の頭越しに中国と取引をする懸念も拭えない。

日本も強硬一辺倒に陥らず、対話の努力を続ける必要がある。難しいかじ取りを続ける欧州の現実路線を注視したい。