首相の改憲意欲 多数派の強行許されぬ
2026年2月13日 北海道新聞
高市早苗首相は衆院選での自民党圧勝を受け、憲法改定への強い意欲を示した。「改憲案を発議し、少しでも早く国民投票が行われる環境をつくれるよう粘り強く取り組む」と述べた。
選挙前には「国論を二分するような大胆な政策改革に挑戦したい」とも語っていた。自民党は連立を組む日本維新の会とともに2026年度中に改憲条文案の国会提出を目指すという。だが、憲法を変えなければ国が行き詰まるほどの重大問題に直面しているわけではない。数の力と「改革」のムードに流されるような改憲論議は危うい。
国の最高法規である憲法の論議は、国会での幅広い合意形成や国民の広範な支持が欠かせない。多数派が一方的に推し進めるようなことがあれば、分断を招くだけだ。改憲に向けた強引な対応は許されない。
首相は自民優勢が伝えられた衆院選の後半に改憲の必要性を訴えだした。選挙の論点として位置づけ、改憲機運に勢いを付ける思惑だったのだろう。選挙前の記者会見では「普通の国になる」と述べ、防衛力のさらなる増強やスパイ防止法の制定などと合わせて改憲への意気込みも示していた。
自民と維新の連立政権合意では緊急事態条項の創設にも触れているが、首相の真の狙いは9条の改定にあるとされる。自民党は現在、戦力不保持を掲げた9条2項を維持した上で「自衛隊」を明記する案を訴えるが、野党時代に出した改憲草案では9条2項を削除して「国防軍」の明記を掲げていた。首相も就任前、この草案が「ベストだ」と述べていた。
日本国憲法は国民主権、基本的人権の尊重、平和主義が3原則だ。自民党内で進む改憲論はこれを強化するどころか、形骸化させる議論と言わざるを得ない。平和国家を根底から変質させる改定は認められない。
今回の衆院選で自民党は改憲発議に必要な3分の2を超える議席を得た。共同通信のアンケートでも自衛隊の存在明記に賛成の衆院議員は8割に上った。とはいえ世論は9条改定への反対が根強い。参院で少数与党の状況も変わっていない。拙速は戒めるべきである。
首相は国会で「内閣は改憲原案を提出できる」と異例の発言をした。与党内では憲法審査会の改憲派だけで条文案を作り、多数決に持ち込むべきだとの議論もある。だが少数意見を尊重するのが憲法論議の大原則だ。憲法は政治権力を制限し、その暴走を防ぐためにあるという立憲主義を忘れてはならない。
コメント