米ロ核軍縮失効 危機回避の戦略急務だ
2026年2月12日 北海道新聞
世界の核兵器の9割を保有する米国とロシアの間で唯一残る核軍縮合意「新戦略兵器削減条約(新START)」が失効した。冷戦終結の象徴である枠組みの消滅は際限のない軍拡競争に再び道を開きかねない。
核拡散防止条約(NPT)は米英仏ロ中に核保有を認める一方、核軍縮の義務を課してきたはずだ。新START失効はNPT体制の前提を瓦解(がかい)させるもので、開発を禁じられた非保有国の離反を招きかねない。
核開発を巡るイランや北朝鮮の動向に加え、唯一の戦争被爆国日本でも平然と核保有論が主張される事態は危うい。4月に再検討会議が始まるNPT体制を死守し、核廃絶に向けた多国間協議と戦略の構築が急務だ。
米国は急速に核戦力を増強する中国への警戒感を強め、ロシアは米英仏が加盟する北大西洋条約機構(NATO)を敵視する姿勢を崩していない。米科学誌は1月、人類滅亡までの残り時間を示す終末時計が85秒と1947年の創設以来最短になったと発表した。防衛を口実とした核戦力増強は厳に戒めなければならない。
ロシアは2023年の条約履行停止表明後も離脱はせず、昨年にはプーチン大統領が事実上の延長を提案したが、ウクライナ和平を巡る交渉材料に過ぎなかったと言わざるを得ない。第1次政権時に中距離核戦力(INF)全廃条約を離脱したトランプ米大統領は、中国も核軍縮の枠組みに加わるべきだとの考えで、新START失効はやむを得ないと述べていた。あまりに短絡的で無責任だ。
トランプ氏は昨年、核実験の準備を指示した。再開すれば、近代化を図る中ロに加え、インドなどのNPT非加盟国の追従は必至だ。中国などすべての保有国を対象とする核軍縮の枠組みの構築を急がねばならない。
核の危機を克服する道が外交による軍備管理である。その一つが1996年に国連総会で決議された包括的核実験禁止条約(CTBT)の早期発効だ。米中ロなど条約発効に必要な原子炉等を持つ特定の44カ国全ては速やかに批准するべきだ。
衆院選で圧勝した自民党の高市早苗首相が前倒し改定の方針を重ねて示した安全保障関連3文書の協議では、非核三原則が焦点の一つとなっている。核兵器は人類と共存し得ない。原爆使用を正当化するようなトランプ氏の発言やロシアの核の威嚇で「核のタブー」の規範性が危うい。日本は非核三原則を堅持し、法の支配と対話による核廃絶に貢献するべきだ。
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