首相会見 「大胆さ」より謙虚さを


2026
210日 北海道新聞


高市早苗首相は自民党が3分の2を超す議席を得た衆院選を受け、党総裁として記者会見した。実現を目指す「国論を二分する大胆な政策」について「責任ある積極財政」への転換や、安全保障政策と国家インテリジェンス機能の強化を挙げた。

 
憲法改定についても「少しでも早く国民投票が行われる環境をつくれるよう、粘り強く取り組む」と強調した。
首相は「さまざまな声に耳を傾け謙虚に、しかし大胆に政権運営に当たる」と述べたが、いずれも国の歩みを変え、将来を大きく左右するテーマである。

 
数に任せて強引に進めていてはかつての「安倍1強」時代と変わらず、立法府の空洞化を招く。将来に責任を持ち、「大胆さ」よりも丁寧な説明と議論を尽くさなければならない。
首相は公示直前に打ち出した食料品の消費税率を2年間ゼロにする案について、各党に呼びかけて今後設置する社会保障に関する国民会議で「実現に向けた検討を進める」と述べた。夏までに中間報告を取りまとめる方針も示した。

 
財源は補助金や租税特別措置の見直し、税外収入などで確保すると主張したが、規模は年間5兆円に上る。社会保障財源の確保にも支障を来しかねない。与野党が議論を尽くし、合意形成を図ることが必要だ。

 
衆院選で自民党が公認し当選した派閥裏金事件の関係議員については「理解が得られたと言う考えはない」としつつ「国民のために全力で働いてもらいたい」と述べた。政治とカネを巡る問題に道筋をつけずに幕引きを図る姿勢は許されない。

 
外交への対応も考え直す時だ。首相は自身の台湾有事を巡る発言をきっかけに緊張が続く対中関係について「意思疎通を継続していく」と述べたが、事態打開の道筋を示せていない。
 来月に控える訪米に向けては「揺るぎない日米の結束を確認したい」と語った。国際秩序を揺るがし、対米投資や防衛費の増額などを迫るトランプ政権に追従するだけでいいのか。

 
政権基盤が強化されたからこそ、平和国家として国際社会に法の支配を取り戻す独自の外交戦略を構築せねばならない。
一方、議席を公示前の3分の1以下に減らした中道改革連合の野田佳彦、斉藤鉄夫両共同代表はそろって辞意を表明した。

 
責任を取るのは当然だが、数は減っても野党第1党であることに変わりはない。「高市1強」の国会で、政権の監視役としての責任は重い。態勢の立て直しを急ぐ必要がある。