衆院選で自民圧勝 「高市一色」に染まる危うさ


2026
29日北海道新聞


衆院選は、自民党が単独で法案の再可決が可能になる3分の2を超えて圧勝した。過去最多を更新し、北海道の12小選挙区も自民党が11勝した。高市早苗首相は「首相を決める選挙」として自身への信任を求め、人気投票の色合いを強めた。具体的な政策や、自らに浮上した疑惑に対する説明は避け、逃げ切った形だ。

 
真冬の超短期決戦で、自民党は内閣支持率の高い首相を前面に押し出すイメージ選挙を展開し、政策論争はかすんだ。
野党では、立憲民主党と公明党が結成した中道改革連合が惨敗した。目指す姿を示せず、浸透しなかった。

 
参院は少数与党が続くものの、衆院は与党の日本維新の会や議席を伸ばした参政党などを含め、首相と政策の方向性が近く、9条改憲に前向きな勢力が大多数となる。歯止め役となる勢力は大幅に縮小し、「高市一色」の様相だ。

 
首相は「国論を二分するような大胆な政策に挑む」と語るが、中身は明示していない。数に任せて独走すれば分断を深め、国の将来も危うくしかねない。全てを委任されたわけではないことを肝に銘じるべきだ。おごりは許されない。
民主主義は多数決だけで成り立つものではない。少数派の意見にも耳を傾ける謙虚な姿勢こそが求められる。

■「推し活」でいいのか

 
首相が道内入りした際の演説会場は聴衆であふれ、若者や女性の姿が目立った。道外から足を運ぶ人もおり、アイドルの「推し活」さながらだった。
高市人気は、初の女性首相であり、「強さ」を打ち出す姿勢や歯切れのいい言動などの印象に支えられているとみられる。閉塞(へいそく)感を抱える有権者の期待を集めたのだろう。

 
衆院選は政権選択の場だが、候補や政党が政策を競い合うのが本来の姿で、人気投票ではない。見過ごせないのは、自身を問うと言いながら、肝心なことを語らない首相の姿勢だ。
解散で2026年度予算案の本年度内成立を後回しにしたが、いまなぜ、何のための選挙だったのか、最後まで納得できる説明はなかった。きのうは全国的に大雪に見舞われ低投票率が見込まれているが、責任は厳冬期に解散した首相にある。

 
電撃的な解散には、世界平和統一家庭連合(旧統一教会)との関係を巡る追及を封じる狙いも指摘され、期間中に関連団体による首相のパーティー券購入や裏帳簿の存在も報じられた。
だが、NHKの党首討論番組を急きょ欠席するなど、自身の疑惑や言動について説明責任を果たしたとは言えない。

 
演説では円安の利点を強調し「外為特会(外国為替資金特別会計)の運用はホクホク状態だ」と述べた。円安は物価高の要因だ。生活の厳しさを理解していないと言わざるを得ない。

■平和国家変質の恐れ

 
この結果は日本の大きな分岐点となる可能性がある。多くの議席を託した有権者も、国政の行方を注視する必要がある。
首相は「急務」として安全保障関連3文書の抜本改定やスパイ防止法などのインテリジェンス機能強化、憲法と皇室典範の改定などを挙げる。タカ派色が強く、個人より国家を重視し国民を監視する方向性が浮かぶ。

 
終盤には改憲に言及した。衆院は9条改憲に前向きな勢力が発議に必要な3分の2を超えたが、平和国家を大きく変質させることは認められない。
選挙戦では、持続可能な社会保障のあり方や人口減少、米中両国との関係など日本がいま向き合うべき課題は置き去りにされた。逆に与野党がそろって消費税減税を訴えるなど、ポピュリズムの拡大が鮮明になった。

 
首相は公示直前に食料品の税率2年間ゼロの検討加速を表明し、積極財政への転換を強調している。米国が求める防衛費のさらなる増額も予想される。
財政出動を求める流れが強まるのは確実で、財政悪化が進み、円安や長期金利上昇も加速しかねない。ほぼ唯一、消費税減税を訴えなかったチームみらいが躍進したのは、有権者の不安の表れではないか。

 
自民党が公認した派閥裏金事件に関与した前職・元職は続々と当選した。だが、高市人気の追い風を受けたにすぎず、実態解明や政治資金改革に取り組まずに不信は解消できない。

■中道の対立軸見えず

 
中道は「中道勢力の結集」を掲げたが、与党の対抗軸になり得なかった。「中道」が何を指すのかも伝わらず、政権を担う熱意も感じられなかった。
与野党に分かれていた両党が合流するにもかかわらず、丁寧な政策議論を欠いた。安保関連法や原発への対応で与党との違いが曖昧になり、立憲支持者や無党派層も離れたとみられる。

 
政権の歯止め役となる勢力を大きく減らし、結党の目的とは裏腹に政治の右傾化の流れを加速させた責任は重い。