北方領土の日 交渉再開へ準備怠るな


2026
27日 北海道新聞


きょうは北方領土の日だ。185527日の日露通好条約で、四島が平和的に日本領となったことを踏まえている。ロシアがウクライナ侵攻を始めてからまもなく4年となる。日ロ関係は戦後最悪と言われる状態が続いており、領土返還交渉再開の展望は見えない。

 
国際秩序も大きく揺らいでいる。ウクライナ侵攻は北方領土の不法占拠と同じ国際法違反の暴挙だが、仲介役を自任するトランプ米大統領はウクライナに領土割譲の譲歩を迫っている。

 
しかも米国自身が主権を侵してベネズエラを攻撃し、デンマーク自治領グリーンランドの領有に意欲を示す。力による現状変更は断じて認められない。
高市早苗首相は米国を非難しないが、対米追従で曖昧姿勢を続ければ領土に関する日本の主張の正当性も弱まりかねない。

 
元島民の平均年齢は90歳に達した。政府は日ロ関係が膠着(こうちゃく)状態の今こそ、交渉再開への準備を戦略的に練るべきである。
今年は日ソ両国が戦争状態を終結し、国交を回復した日ソ共同宣言から70年になる。過去の交渉では第2次安倍晋三政権が2島返還方針に転換したが、成果を得られなかった。腰が定まらない外交は足元を見られる。

 
政府はこれまでの交渉経過を検証しつつ、わが国固有の領土である四島の早期返還という原点を再確認せねばならない。
ロシアは領有を正当化し、実効支配を誇示する動きを強めている。歯舞群島の無人島にロシア正教の偉人の名を付けたり、記念行事や軍事訓練を行ったりする。元島民はじめ日本側の反感をあおる行為は慎むべきだ。

 
首相は昨年の所信表明演説で「政府方針は領土問題を解決し平和条約を締結することだ」と述べたが、強い熱意は感じられなかった。黄川田仁志沖縄北方担当相は就任後初めて訪れた根室で、北方領土を外国の領土とみなすかのような発言をした。

 
政権の問題への関心に疑問を持たざるを得ない。
 あすは衆院選の投票日だが、与野党の論戦で北方領土問題がほとんど取り上げられてこなかったのは極めて残念だ。 北方四島周辺での日本漁船の安全操業に関する政府間協議はロシアが拒否を続けている。ビザなし交流や自由訪問も止まったままだ。政府は、まずは北方領土墓参の再開に向け、全力を尽くすべきである。

 
日ロ間では民間や学術の交流も細ってきているが、意義は大きい。長年の積み重ねで築いたパイプを維持し、政府間交渉再開の機運につなげていきたい。