イラン抗議デモ 武力自制し事態収束を


2026
115日北海道新聞


昨年末の通貨急落を端緒とするイランの抗議デモは全土に広がり、治安部隊との衝突などで多数の犠牲者が出ている。いかなる事情も流血正当化の理由とはならない。イラン政府は速やかに弾圧をやめるべきだ。

 
米国が主導する経済制裁でインフレと雇用不安が続くイランの国民は長年、経済危機に苦しんできた。通貨下落で食料価格がさらに急騰し、不満が一気に爆発した格好だ。経済危機を克服しない限り、事態の収束は望めまい。

 
イラン政府は、親米のパーレビ王朝が専制政治と腐敗でイスラム革命により倒されたのと同様に、現在の支配層が糾弾されていることを自覚する必要がある。強権的な対応では事態を悪化させるだけだ。

 
制裁の背景には核開発に対する疑念がある。第1次トランプ政権が開発制限を定めた核合意を一方的に離脱したとはいえ、イランは国際原子力機関(IAEA)査察受け入れで国際的孤立を解消する道を探るべきだ。

 
当局に拘束された女性の死亡をきっかけに始まった2022年の抗議運動は人権問題の側面が強かった。今回は1979年のイスラム革命を支えたバザール商人や若者など職種や世代を問わない。近年のデモと様相を異にすることに注意が必要だ。

 
民族宗派が混在するイランでは反体制的な動きも一枚岩ではない。昨年のイスラエルとの武力衝突で弱体化した体制がほころべば、フセイン政権崩壊後に内戦状態に陥ったイラクの二の舞いとなる可能性がある。

 
看過できないのは、抗議行動をあおり、デモ参加者を殺害すれば「打撃を与える」と武力介入を示唆するトランプ大統領の姿勢だ。内政不干渉や主権と領土保全を定めた国連憲章違反を繰り返してはならない。

 
米国は昨年、イスラエルとともにイランの核関連施設を爆撃した。再攻撃は核開発の暴走や技術拡散を招き、核拡散防止条約(NPT)体制の維持にとっても好ましくない事態となる。
トランプ政権は当面、イランと取引のある国に対する2次関税を課す方針だが、武力行使に踏み切れば、親イランの中国やロシアの介入を招き、覇権争いの場となりかねない。

 
国際社会はすべての当事者と関係国に強く自制を求め、事態の沈静化を急ぐべきだ。
国連のグテレス事務総長は声明でイランに武力使用を控えるよう求めた。政府開発援助(ODA)を通じて友好な関係を維持する日本も、外交による解決に貢献する必要がある。