首相冒頭解散へ 大義見えぬ党利党略だ


2026
114日 北海道新聞


高市早苗首相が、23日召集の通常国会冒頭で衆院を解散する意向を固めた。来月上中旬の投開票となる見通しだ。7割前後の高い内閣支持率を背景に、自民党の議席回復が見込めると判断したとみられる。

 
首相は物価高対応を政権の最優先課題に掲げてきたはずだ。通常国会の冒頭解散は異例で、賃上げ支援などを含む2026年度予算案の審議は大幅に遅れ、年度内成立は難しくなる。
暮らしを後回しにして何を問うのか。言行不一致で「大義」が見えない。党利党略のために解散権を乱用してはならない。

 
自民党は昨年の参院選後、石破茂前首相の進退を巡って3カ月もの政治空白を招いた。国民に信を問うていないとはいえ、高市政権はまだ発足3カ月弱で衆院議員の任期は残り29カ月ある。また自己都合で政治空白を繰り返すのだろうか。

 
首相は年頭記者会見で解散について問われ「国民に高市内閣の物価高対策や経済対策の効果を実感いただくことが大切だ」と述べていた。だが、年明けも円安が進み、有効な手を打てていない。実感にはほど遠い。

 
首相の台湾有事を巡る不用意な発言で緊張が高まる対中関係でも、レアアース(希土類)の輸入などに影響が出始めている。経済を重視するというなら予算の年度内成立が大前提だ。
 高市政権を巡っては、新たな問題も浮上している。

 
世界平和統一家庭連合(旧統一教会)が21年の衆院選で自民党の290人を応援したとする内部文書が昨年末、韓国で報じられた。首相も32回登場する。
与党・日本維新の会の地方議員が、一般社団法人理事に就くことで国民健康保険の支払いを軽減したとされる「国保逃れ」も拡大の様相を見せている。

 
派閥裏金事件をはじめとする「政治とカネ」の問題では、企業・団体献金禁止に消極的な首相の姿勢が際立ち、政治不信解消は手つかずだ。首相が代表の党支部が上限超えの企業献金を受けていたことも判明した。

 
支持率低下を懸念し、解散で野党の国会追及を封じる思惑があるなら不誠実極まりない。
首相は17年の臨時国会冒頭で解散した安倍晋三元首相を意識しているとみられる。安倍氏が小刻みに解散を繰り返すなど、時の首相の都合のいい時期に衆院選が行われる例が目立つ。

 
首相の解散権は内閣不信任決議案可決を除き、天皇が内閣の助言と承認で行う国事行為として衆院解散を挙げている憲法7条が根拠とされる。乱用を許さない仕組みが必要だ。