コメ政策の転換 安定供給へ抜本対策を


2025
620日 北海道新聞

 
コメの価格高騰が国民生活に深刻な影響を与え続けている。
政府は備蓄米放出を随意契約に切り替え、安価で流通させる対策を取った。全体の価格は3週連続でやや下がったが、なお前年同期の2倍近い。

 
石破茂首相は、コメ増産を視野に入れた関係閣僚会議の初会合を開き、閣議決定した経済財政運営の指針「骨太方針」でも水田政策の見直しを掲げた。
コメは日本人の主食であり、食料安全保障の柱だ。

 
農家は担い手の減少や高齢化が止まらず、生産基盤の弱体化は急速に進んでいる。安易に輸入米を拡大すれば、こうした流れをさらに加速させかねない。
これまでの農政を検証し、農家が持続可能な生産を続けられるよう、抜本的な改革が何より求められている。

 
小泉進次郎農水相は集荷や卸売業者の在庫量調査について、従来の大手約900事業者だけでなく、小規模業者を含めた約7万事業者へ大幅に拡大する。流通実態を把握するためだ。
複雑な流通過程がコメ価格高騰の一因と指摘されてきた。流通の改善が価格の安定と農家の手取り増加につながるのであれば、歓迎すべきだろう。

 
ただ、問題の所在が具体的に示されたわけではなく、精査することが欠かせない。
小泉氏は気候変動などの影響で実態と合わなくなってきたとして、約70年続けてきた作況指数を廃止することも決めた。

 
今夏は猛暑が予想され、作柄への影響も懸念される。精度を高めた新たな収穫量調査の方法を早急に確立してほしい。
最大の焦点はコメ増産の是非である。農林水産省は2018年に生産調整(減反)を廃止後も飼料用米や麦への転換を促し、事実上減反を続けてきた。

 
生産抑制がコメ不足や高騰の一因になったことは否めない。
供給量が増えれば価格の下落につながりやすくなる一方で、コメ農家の収入減に直結する可能性がある。農家の所得を直接支える制度についても、併せて検討するべきだ。

 
生産者と消費者の双方が納得できる適正価格で安定供給する仕組みが不可欠である。
農地の大規模化を図りつつ、水田の多面的な機能を保つために中山間地域の一定の維持も必要だ。農家支援には地域に応じた柔軟な手法が求められる。

 
政府は今春閣議決定した食料・農業・農村基本計画で、コメの輸出を7.6倍に増やすことを掲げた。まずは国内の安定供給に注力した上で、具体的な輸出戦略を示すべきだろう。