終盤国会 懸案積み残し許されぬ


2025
531日 北海道新聞

 
通常国会は622日の会期末まで約3週間となった。
昨年秋の衆院選で少数与党になり、今国会は政策決定の変化や熟議が期待された。だが、政府・与党は対米関税交渉やコメ高騰対策を盾に懸案を先送りする姿勢が目立ち、野党はまとまりを欠き結果を出せていない。

 
特に「30年来の宿題」だった選択的夫婦別姓導入と企業・団体献金禁止は、実現しない見通しが強まっている。年金制度改革法案はきのう衆院を通過したものの、修正案の審議はわずか3日で熟議とはほど遠い。

 
背景には政策ごとに各党を選別して取り込む与党と、参院選に向けて独自色をアピールしたい野党各党の構図がある。党利党略で議論が深まっていないのが現状だ。懸案を積み残したまま終わらせてはならない。

 
選択的夫婦別姓制度を巡ってはきのう、それぞれ導入を目指す立憲民主党と国民民主党、旧姓の通称使用を法制化する日本維新の会が提出した3法案が審議入りした。衆院で選択的別姓について質疑が行われるのは28年ぶりだ。

 
慎重論が根強い自民党は法案を出さない一方、野党案への賛成にも慎重で、3案はいずれも成立のめどが立っていない。
党が割れるからといって法案提出を見送った自民に最も問題があるのは言うまでもない。

 
ただ、実現の好機を生かしきれない野党にも責任がある。特に立憲と国民民主は導入の方向で一致する。共同提出して自民の推進派や公明党を取り込めば過半数も視野に入ってくる。独自色発揮にこだわらず、合意点を見いだす努力をすべきだ。

 
一方、派閥裏金事件を契機とした企業・団体献金見直しの議論も置き去りにされている。
立憲や維新など野党5党派は政治団体を除き禁止する法案を共同提出しているが、成立のめどは立たないままだ。

 
自民は透明性を高め献金を存続する法案を出した上で、国民民主、公明とも存続で合意している。だが、3党が合意を法案提出する気配はない。現行制度を温存したい意図が透ける。
そもそも与野党は企業・団体献金のあり方について、3月末までに結論を出すことで合意していた。それを延期したにもかかわらず、いまだに議論が深まらないのは、政治不信を甘く見ているとしか言いようがない。

 
確かに関税交渉やコメ高騰は喫緊の課題だが、他の懸案も議論する時間は十分にあった。与野党が議論を尽くして信頼を取り戻さなければ、直面する難題に向き合うことはできない。