備蓄米売り渡し 全体の価格抑制できるか
2025年5月28日 北海道新聞
農林水産省はコメ価格の高騰を抑えるため、政府備蓄米の放出を競争入札から随意契約に転換した。2021、22年産米の計30万トンをネット通販を含めた大手小売業者に入札時の半値程度で売り渡す。店頭価格は5キロ当たり税込み2160円を目指す。過去最高の4285円となった全国平均の約半額で、一部は6月上旬から店頭に並ぶ見通しだ。
ただ、今回は需要のおよそ半月分に過ぎない。残る在庫すべてを合わせても年間の需要見通しの約1割にとどまる。銘柄米やこれまでに放出した備蓄米などに波及して、米価全体が下がるかは疑問である。
放出先を大手小売業者に絞ったことで流通が都市部に偏重しかねず、地方や中小の業者が置き去りになる恐れもある。小泉進次郎農水相はきのうの記者会見で「まちのコメ販売店や小さなスーパーなどにきめ細かくどう届けるか、次にやらなければならない」と述べた。
流通の公平性を保ち、早急に具体策を打ち出すことが求められている。手法についても課題が多い。備蓄米は本来、不作や災害などに備えて保管されている。大量放出によって使い尽くしてしまえば、緊急時の対応はどうするのか。食料安全保障の観点から不安が残る。
備蓄米は玄米で渡されるため、販売する大手小売業者は精米作業をする必要がある。ただ、自前の精米施設を持っていない業者が多いため、円滑に進まない場合も想定される。今回は集荷業者などを通さずに直接小売りに渡す。これまで農水省は高騰の理由に流通過程の目詰まりを指摘してきた。流通のどこに問題があり、どう改善するのか、対応が不可欠だ。
米価に関して政府は市場に委ねると繰り返してきた。介入するのは異例の事態であり、正常化することが肝要である。消費者と生産者の双方が納得できるような適正価格を実現するためには、持続可能な農政を見据えた抜本的な対策が、何よりも必要だ。
政府は18年にコメの生産調整(減反)を廃止した後も飼料用米や麦への転換を促し、実質的に減反を続けてきた。こうした生産抑制が昨夏以降の米不足や高騰の一因になったのは否めない。これまでの農政を省みるべきだ。
安定供給と適正価格を保っていくためには、農家が所得を安定させ、安心して生産に取り組める具体策と、その道筋を描くことが求められる。
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