ガザ大規模戦闘 非道な侵攻直ちにやめよ
2025年5月21日北海道新聞
イスラエル軍がパレスチナ自治区ガザ北部と南部で大規模な地上侵攻を開始した。イスラム組織ハマスの拠点などへの空爆も繰り返している。3月中旬にガザ攻撃を再開して以降、最大規模の侵攻とみられる。
イスラエルのネタニヤフ首相はガザ全域の「制圧を目指す」と述べた。18日から2日間の死者は少なくとも200人を超える見込みだ。イスラエルとハマスは直前まで仲介国カタールで米国を交えて停戦交渉を行っていた。トランプ米大統領の中東歴訪中に交渉の進展がなければ攻撃を拡大すると警告していたが、あまりにも身勝手な論法だ。
非人道的な蛮行により犠牲を増やすのは許されない。イスラエルは直ちに攻撃をやめ、停戦交渉に立ち戻らねばならない。ネタニヤフ政権は極右政党の影響力が増しており、今回の作戦は、ガザの一部占領や軍の長期駐留も見据えているという。当初は奇襲攻撃への報復や人質解放を主張していたはずだ。戦闘目的のあまりにも過激な変更は理解を超えている。
イスラエル国内の反発もかつてなく強まっている。ネタニヤフ氏は米国からの停戦合意の働きかけにも応じなかった。対話を抜きにした力による封じ込めは断じて認められない。イスラエルは2カ月半にわたりガザへの人道支援物資の搬入を認めなかった。現地は飢餓を懸念されるほどの食料不足に陥っている。国際人道法違反と指摘されても仕方あるまい。
イスラエルは搬入再開を発表したが、その量はわずかにとどまり、国連も批判している。速やかに搬入を拡大し、実効性ある対応を取るのが当然である。今回の中東歴訪でトランプ氏は総額2兆ドル以上の経済取引をまとめたと誇示したが、イスラエル訪問は見送った。強硬路線を崩さないネタニヤフ氏と協議しても成果は出せないと、損得で判断したのではないか。
トランプ氏は、国際法に反するガザ住民の強制移住やガザのリゾート地開発構想など、住民の尊厳を無視した言動を繰り返してきた。その上、停戦合意が見通せないから投げ出すというのでは無責任極まりない。
英仏カナダの3カ国首脳はイスラエルに大規模侵攻の即時停止を求める共同声明を発表し、状況が改善しない場合は制裁に踏み切る可能性を示唆した。トランプ氏も中途半端な言動は改め、踏み出さねばならない。国際社会の結束と圧力が極めて重要な局面だ。日本も和平に向け積極的に動く時である。
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