続く郵便不祥事 物流担う自覚あるのか
2025年4月29日北海道新聞
安全運転が最優先である物流事業者としての自覚が厳しく問われよう。日本郵便の全国集配担当局の75%で、配達員に酒気帯びを確認する法定点呼業務が不適切だったことが分かった。全13支社で不適切が確認されたが、北海道は86%と2番目に高い。日本郵便は地域特性があるのか分析を進めるという。
運転前後の点呼は貨物自動車運送事業法を基に義務づけられており、国土交通省は先週特別監査を始めた。日本郵便では昨年度4件の飲酒運転が発覚し物損事故を起こした例もあった
。配達用車両使用停止など厳しい行政処分の可能性もある。
規律の乱れは官業以来のあしき慣習か、民営化後の不振が要因かも含め、背景の検証が大切だ。不祥事続きの郵政グループは今度こそうみを出し切らねば国民の信頼は回復できまい。 点呼不適切は先月に一部報道で発覚し、日本郵便が全国で調査を実施していた。各郵便局の防犯カメラ映像で確認したうえで聞き取りも行った。
点呼ではアルコール検知器を使用するが「繁忙時は行わなかった」「面倒だから管理者がいる時のみやっていた」との回答が多いという。点呼実施の虚偽報告があった疑いもある。 見逃せないのは映像でも聞き取りでも点呼したか不明な局が全国で2%あることだ。組織としての体をなしていない。
旧郵政省出身の千田哲也社長は記者会見で「かなり前からの不徹底ではないか」「(プロ意識が)希薄化していた」と述べた。人ごとのような発言だ。6月就任予定の小池信也社長も旧郵政省出身で現場を知る近畿支社長を務める。親会社日本郵政でも郵便で東海支社長経験がある根岸一行氏が社長につく。現場との意思疎通に懸念があり組織統治の不安は残る。
日本郵便では顧客情報の不正流用が昨年発覚し、今年に入っても配送委託業者に対する不当な違約金が問題化した。地域密着を掲げながら北海道など各支社は一連の不祥事を地元で丁寧に説明していない。今回も経営陣が形式的に謝罪して終わりでは済まされない。
ネット通販の物流需要が増える一方、運転手不足は深刻だ。半世紀前から効率化や電子化を進めてきたヤマト運輸など物流大手との実力差は大きく、現場に余裕がないとの指摘もある。
郵便局網維持のため自民党は交付金拡充などを柱にした議員立法の提出を検討してきた。だが組織温存を図るより前に、モラルハザードを生む企業風土の一掃に取り組むべきである。
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