道の核ごみ意見 選定に疑義示した重さ
2025年4月28日北海道新聞
原発から出る高レベル放射性廃棄物(核のごみ)の最終処分場選定を巡り、原子力発電環境整備機構(NUMO)がまとめた後志管内寿都町と神恵内村の文献調査報告書について、北海道が意見書を提出した。
次の段階の概要調査に進むことに「現時点で反対の意見を述べる考え」と明記した。核のごみ持ち込みを「受け入れ難い」と宣言した核抜き条例に基づく妥当な判断であろう。市町村が調査に手を挙げる方式については「最適な処分地を選定する観点で課題がある」と指摘し、「国が全国の適地を調査し候補地を絞り込む」よう選定プロセスの見直しを求めた。
国の原子力政策の柱の一つである最終処分場選定について、地方自治体が疑義を呈したと言える。国とNUMOは真摯(しんし)に受け止めるべきだ。文献調査開始から4年以上たつ。調査に応じたのは両町村と佐賀県玄海町だけだ。最終処分場選定に関する国の「科学的特性マップ」での不適地を含む。
巨額の交付金で市町村を調査に誘導するやり方が、科学的、客観的見地から処分場を選定するとした国の方針と齟齬(そご)を来しているのは明らかだ。意見書が「結果として北海道だけの問題になってしまうことを懸念している」としたことはうなずける。
寿都町の片岡春雄町長も手挙げ方式をやめて、概要調査まで国の責任で行うよう2月のシンポジウムで訴えた。ただ国が候補地を絞り込み、地元の意向を顧みずに調査すれば強い反発を招くのは必至だ。
鈴木直道知事は18日の記者会見で「最終処分法上の課題があることについて、全国民的理解が進んでいない」と指摘した。問題の根本はそこにある。核のごみは原発の電力を享受する都市部にも関係がある。国は国民的な議論を喚起し、処分方法と選定プロセスから再検討するべきだ。
地殻変動が激しい火山列島の日本で核のごみが無害化する10万年もの間、地下に封じ込める地層処分は不可能だと指摘する専門家は少なくない。日本学術会議は廃棄物を地上に50年間暫定保管し、最終処分のための合意形成や適地選定、リスク管理を行うよう提言している。地層処分は妥当なのか、処分可能な場所はあるのか、もしあるなら最適地はどこなのか、多角的な議論が不可欠だ。
国は原発の再稼働を進めている。最終処分場の見通しも立たないまま、核のごみを増やすのは無責任だと言うほかない。
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