年金改革法案 提出急ぎ議論深めたい
2025年4月27日北海道新聞
年金制度改革法案が、5月の連休明けにも今国会に提出される見通しとなった。首相が本会議などの質疑に出席する「重要広範議案」に指定され、本来なら3月に提出されるはずだった。だが、今夏の参院選への影響を懸念する自民党内で反対論が拡大し、大幅に遅れている。
この間、政府は自民党に配慮して改革の柱である低年金対策の骨格部分を法案から外した。骨抜き同然となり、今の年金生活者や現役世代の将来への不安に応える内容になっていない。
持続可能な年金制度をどう築くかは喫緊の課題だ。法案を速やかに提出し、政府案の是非を含め議論を深める必要がある。年金制度は5年に一度、見直される。今回の焦点の一つが、財政の悪化により給付水準の低下が加速する基礎年金の底上げ策だった。
政府は当初、会社員らが入る厚生年金の積立金を財源に活用するとした。将来の基礎年金は増えるが、厚生年金額は一時的に減る。野党が疑問視し、自民党にも反対の声が広がった。
基礎年金の半分は国費負担で、底上げすれば負担増の議論が迫られることも敬遠材料になった。政府は底上げの可否の判断を2029年以降に先送りする方針を決めたが、最終的に法案から削除を余儀なくされた。
今回の改革では他にも、基礎年金の納付期間の5年延長やパート労働者らの厚生年金への加入拡大も掲げていたが、いずれも負担増への批判を受け、見送りや先送りになった。現状のままでは将来の年金世代への影響は必至だ。とりわけ非正規雇用期間が長く、基礎年金の依存度が高い就職氷河期世代などは深刻な状況となろう。
年金制度は現役世代の保険料を高齢者らの給付に充てる、世代間の支え合いの仕組みだ。 医療や介護を含む社会保障全般の支え手は減り続け、高齢者の保険料や自己負担の見直しが進む。物価高も深刻だ。安心できる老後の暮らしをどう保障するか、政治の責任は重い。
年金制度は複雑な上、職種や世代などの違いによりさまざまな利害がからむ。だからこそ開かれた国会の場で、十分な時間を確保する必要がある。だが法案の提出が5月中旬なら、審議の期間は会期末までの1カ月程度しか見込めない。
少数与党下で法案を成立させるには野党の協力が不可欠だ。野党も政権担当能力を示す好機ではないか。対案を示すなどして中身の濃い議論を重ね、合意形成を図ってもらいたい。
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