タイヤ直撃有罪 車両の安全保つ戒めに


2025
426日北海道新聞

 
札幌市で2023年、走行中の軽RVから外れたタイヤが女児に直撃し重体となった事故で、札幌地裁が運転していた被告に有罪判決を言い渡した。
車を使用する人は車を点検し、必要に応じ整備をすることが義務付けられている。それを怠って重大な結果を招いたことと、危険な不正改造を行ったことを判決は認定した。

 
不正改造を行った所有者の被告は罰金とした。
当時4歳の女児は1年半近くがたった今も意識が戻っていない。痛ましいと言うほかない。誰もが利用する公道を走行する以上、車は常に整備された状態を保たねばならず、不正改造も当然認められない。判決はそう警鐘を鳴らしたと言える。

 
安全の意識を、運転はもちろん、車両の状態にも強く向けるための戒めとしたい。
判決によると、運転者と所有者は車のタイヤを横に突出させる不正改造を行った。車には安全や環境保全のための保安基準が定められている。タイヤを大きく突出させるのは、歩行者を巻き込む恐れがあるため禁じられている。

 
前輪に異常を感じた所有者から点検の依頼を受けた運転者は、タイヤを固定するホイールナットの緩みを確認せずに運転し事故を起こした。自動車運転処罰法違反(過失致傷)が運転者に、道路運送車両法違反(不正改造)が両被告に問われた。

 
これに対し札幌地裁は、不正改造を行ったことで運転者は「ナットが緩みやすく、かつ異常に気付きづらい車両となっていると認識していた」と指摘した。不正改造をタイヤ脱落の直接の原因とはしなかったが、その危険性に言及した形だ。
その上で「点検すべき高い注意義務を怠り、漫然と運転した過失は悪質だ」と結論付けた。

 
所有者に対しても「改造を主導した責任は大きい」とした。
女児の父親は所有者の量刑が軽いのを不服として、過失運転致傷罪の適用も求めて札幌検察審査会に審査を申し立てた。重大な法令違反にもかかわらず、不正改造が疑われる車両を見かけることもある。

 
国土交通省は不正改造車両を見た人からの情報提供を受け付けるなどの取り組みを行っている。警察を含め取り締まりを強化してもらいたい。
冬用から夏用へのタイヤ交換が行われるこの時期は脱落のトラブルが増える。走行前にはタイヤを含めた車両の点検を心掛けてほしい。大型連休が始まった。出かける人は整備の行き届いた車で安全運転に努めたい。