「トランプ政治」3カ月 独善のほころびは明らか

世界を振り回したツケは米国が払うことになる。予兆ともいえるほころびが早くも見えている。トランプ大統領が就任して3カ月になる。不法移民の送還、対外援助の凍結、政府職員の削減など大統領令を次々と実行に移すが、そのそばから執行の差し止めを求める訴訟が相次ぎ、混乱が続く。

なかでも世界を戸惑わせているのが、高関税政策とウクライナ停戦交渉だ。いずれも場当たり的な対応が際立ち、問題に直面する度に軌道修正を繰り返している。一律10%を課したうえで、貿易赤字が大きい相手国・地域に法外な税率を上乗せする「相互関税」は、世界全体を敵に回した。

国民生活への打撃が大きいとみるや、急転直下、上乗せ分の一時停止を発表した。その後も適用除外を拡大するケースが相次ぐ。米国が本丸とする中国は停止対象から除外し、貿易戦争に突入した。だが、中国からは医薬品の原料や兵器製造に必要な鉱物など代替できないモノを輸入している。禁輸などの対抗措置によって痛手を被るのは米国だ。

ウクライナ戦争では、エネルギー施設へのミサイル攻撃の停止や黒海での船舶の安全確保など、部分停戦の同意をロシア、ウクライナ双方から取り付けた。しかし、ロシアは全面停戦に応じようとせず、反発を強めるウクライナとの板挟みとなり、交渉は停滞している。

中東ではイスラエルとイスラム組織ハマスの停戦合意が崩れたにもかかわらず、それを放置して今度はイランとの核交渉に乗り出した。手を広げ、難航すると放り出すなら混迷は深まるだけだ。批判の矛先は米国に向かうだろう。

リスクを冒しながら何を成し遂げたいのか。真意を測りかねる国際社会は長期戦に備え、むしろトランプ氏に焦りの色が見える。それでも米国内の支持率は5割前後と衰えていない。だからといって、大きな戦略もなく世論を追い風に突き進むだけでは、いずれ破綻するのは明らかだ。

本来進むべき道は、共存共栄を目指す貿易交渉であり、法と正義に基づく停戦だ。繁栄と平和を追求すると言うのなら、まずトランプ氏が独善的な態度を改める必要がある。