回顧2024 人権の重みを再認識した


2024
1230日北海道新聞

 
能登半島地震で始まった
2024年が幕を閉じる。
被災地の人たちは今も困難な暮らしを強いられている。加えて冬本番の到来である。豪雪や厳しい寒さが心配だ。国や自治体は支援に漏れのないよう細心の注意を払ってもらいたい。

 
翻って政治に目を向ける。
本来は被災地の復旧・復興に全力を注ぐべき1年だったが、必ずしもそうはならなかった。「政治とカネ」を巡る国会論議などに多くの時間が費やされたからだ。肝心の政治改革は道半ばと言わざるを得ない。臨時国会で政策活動費の全廃などが決まったものの、焦点だった企業・団体献金の禁止については結論が先送りされた。

 
今年は人権の重みを見つめ直す契機にもなった。
旧優生保護法に関する最高裁の違憲判決や、強盗殺人罪などに問われ死刑が確定した袴田巌さんの再審無罪といった大きなニュースが相次いだ。冤罪(えんざい)は決してあってはならない。ただ、誤判の恐れは常につきまとう。袴田さんの事件を教訓に死刑制度存廃の議論を本格的に始める時だろう。

 
戦争は最大の人権侵害だ。
ロシアのウクライナ侵攻は長期化し、イスラエルによるパレスチナ自治区ガザへの攻撃もやまない。すべての殺りくを一刻も早く終わらせねばならない。

丁寧な合意の形成を

 
10月の衆院選は自民、公明両党の与党過半数割れとなった。自民党派閥の裏金事件が有権者の怒りを買ったのは当然だ。
同時に、第2次安倍晋三政権以降の自民党1強体制、そのおごりやゆがみに厳しい審判が下されたとも言える。

 
石破茂首相は所信表明演説で大敗について「国民からの叱責(しっせき)」と語り、「他党にも丁寧に意見を聞き、幅広い合意形成が図られるよう真摯(しんし)に、謙虚に取り組んでいく」と述べている。
果たして言葉通りになっているのだろうか。都合に応じて一部の野党とのみ手を結ぶ姿は有権者の失望を深めるだけだ。演説で話したことを誠実に実行してもらいたい。

 
今年も物価高が家計を直撃した。経済を冷え込ませたコロナ禍の影響が長引いていることもあり、生活保護の申請件数は近年増加傾向にあるという。
国民の生活をあまねく安定させることは政治に課せられた責務だ。なすべき仕事は山ほどある。与野党伯仲の状態を実りある議論につなげたい。それが、少数意見や弱者を置き去りにしないことにも結びつく。

被害者救済を確実に

 
旧優生保護法下で不妊手術を強制された障害者らが国を訴えた訴訟で、最高裁大法廷は旧法は違憲との判決を言い渡した。
関連の補償法が来月施行される。プライバシーの保護に配慮しつつ、補償が受けられることを個別に通知するといった確実な救済策を講じるべきだ。

 
袴田さんの事件では再審制度の問題点が改めて浮き彫りになった。法務省は来春にも、制度の見直しを法制審議会に諮問する方向という。無辜(むこ)の人の救済のために、実効性のある制度にしなければならない。

 
原発の安全性に絶対はなく、住民が抱く不安は人格権に関わる問題だ
。こうした趣旨の理由で、福島原発の事故後初めて原発の運転差し止めを命じた福井地裁判決から10年になる。
原発との向き合い方に一石を投じた司法判断だったが、原発回帰の動きは止まらない。今年は女川原発や島根原発が再稼働した。国の新たなエネルギー基本計画の原案は「可能な限り原発依存度を低減する」との文言を削除した。

 
福島事故による県外避難者はなお
2万人。暮らしやなりわいが長期間脅かされている。政府はこの現実を直視し、原発回帰の政策を改める必要がある。

法の支配貫くべきだ

 
ロシアのウクライナ侵攻は、北朝鮮が派兵し、戦闘に参加していることも見過ごせない。弾道ミサイルや砲弾の供与も伝えられる。戦闘を激化させる暴挙に他ならない。
そもそも侵攻は国際法に違反する。ロシアは全軍を撤退して事態を終結させねばならない。

 
イスラエルはガザへの攻撃を続け、死者は
4万人を超えた。子どもや女性の犠牲が目立つ。
国際刑事裁判所(ICC)はイスラエルのネタニヤフ首相らに逮捕状を出した。ガザの戦闘を巡り、飢餓を起こすなどの戦争犯罪や殺人、迫害といった人道に対する罪を犯した疑いだ。

 
米大統領選は共和党のトランプ氏が勝利した。
1期目のように米国第一の姿勢を強め、国際秩序の不安定化を招く懸念がある。トランプ氏が親イスラエルの度合いを深めていけば、中東地域の状況が一層悪化することも憂慮される。

 
国際社会は人権や法の支配の重要性を再確認し、戦闘停止に向けてロシアやイスラエルへの働きかけを強めるべきだ。