ライドシェア 見切り発車納得できぬ
2023年12月31日 北海道新聞
自家用車を使い客を有料で運ぶ「ライドシェア」について政府は来年4月の一部解禁を決めた。都市部や観光地などのタクシー不足解消を目的に地域や時間帯などを限定して実施するが、運行管理はタクシー会社が担うものだ。
これでは非正規の運転手を増やすだけにも見える。タクシー会社を介さぬ全面解禁は議論を続け来年6月までに方針を出すという。ライドシェアは安全性や労働環境での問題点が指摘されていた。「走りながら制度を考える」ような政府の進め方は納得できない。
鉄道やバス路線廃止が続き、道内でも住民の足確保は切実な問題だ。自治体などに有償送迎を認める現行制度も同時に拡充する。タクシー不足は地域によって事情が異なる。拙速な全面解禁は避け、慎重に判断すべきだ。
ライドシェアはスマートフォンアプリを利用した配車などで米国や中国では急速に普及している。だが日本では第2種運転免許なしでの有償送迎は原則できない。新制度は限定解禁するものの参入は国土交通省の許可制となり、需要が高い対象地域や時間帯を選んで進める方向である。
一般ドライバーとの契約形態は今後詰めるが、車両管理や研修、事故対応はタクシー会社任せだ。推進派の経済人が求める米国のような自由な働き方には程遠いうえ、反対するタクシー業界側にとっても負担が増すことになる。
コロナ禍前に比べ全国のタクシー運転手は2割ほど減少した。外国人観光客が戻り、道内でも後志管内倶知安町やニセコ町などでは供給不足が深刻化する。大泉潤函館市長も導入に前向きという。需要の高まりは理解できる。だが岸田文雄首相が所信表明演説で「課題に取り組む」と述べてからわずか2カ月である。国会論議も尽くされたとは言えない。
旗振り役の菅義偉前首相らに政権が配慮したとの指摘もあり、見切り発車の感は否めまい。一方で、交通手段が乏しい地域で自治体やNPOに例外的に認める自家用有償旅客運送制度は、運賃目安をタクシー料金の約8割に引き上げるなど要件を緩和する。
だが過疎地では高齢者の医療機関送迎などの長距離利用が多く、運賃負担は高額となる。道内では制度をあえて活用せず住民のボランティアに頼む自治体もある。コロナ禍で台頭したウーバーイーツなど食事宅配の恩恵は都市部が主だ。ライドシェアは地方の利便性も高める仕組みを求めたい。
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