回顧2023 命と暮らしを守る政治に


2023
1230日北海道新聞
 


2023年が幕を閉じる。
新型コロナ感染症が感染症法上の「5類」に移行し、イベントが再開されるなど世の中がにぎわいを取り戻す1年だった。3月に開業した北広島市のエスコンフィールド北海道も活況を呈した。

 
一方で世界の戦禍は収まるどころか拡大し、殺戮(さつりく)が続く。
ロシアのウクライナ侵攻は2年に近づき、パレスチナ自治区ガザでも戦闘が始まった。ガザ側の死者は2万人を超える。国際社会はイスラエルが停戦に応じるよう粘り強く働きかける必要がある。

 
長期化するウクライナへの攻撃も出口が見えず、各国の「支援疲れ」が指摘される。
ガザにしてもウクライナにしても、最優先すべきは人命を守ることにほかならない。一刻も早く戦いを終わらせたい。 自民党派閥の政治資金規正法違反事件は、越年して捜査が本格化する見通しだ。東京都江東区長選を巡る公選法違反事件では柿沢未途衆院議員が逮捕された。

 
国民の政治不信は頂点に達している。政治家は今度こそウミを出し切り、実効性の伴う改革を断行しなければならない。併せて、謙虚な姿勢で国民の暮らしに寄り添う施策に取り組むべきである。


深刻な子どもの犠牲

 
ガザの死者で大きな割合を占めるのが子どもや女性だ。
「ガザは子どもたちの墓場と化した」。国連児童基金(ユニセフ)は危機感をあらわにする。13歳の少女は南部の最大都市ハンユニスの自宅が全壊し、両親と2人の兄弟を失った。自身も右足切断の重傷を負う。

 
「自分の権利とすべての子どもの権利を守り認められるようにしたい」。少女は希望を捨てず弁護士になる夢を語っていたが、けがが原因で短い生涯を閉じた。
心が痛み、怒りを禁じ得ない。戦争は、子どもに対する重大な人権侵害である。

 
現地では安全な飲料水の不足も深刻だと報じられる。それが大人より体力が劣る子どもの脱水症状や感染症、栄養不足のリスクを高めている。
ウクライナでは子どもを含む住民の心的外傷後ストレス障害(PTSD)が増えているようだ。

 
いったん心に負った深い傷はそう簡単には癒やせない。
ロシアは戦争のこうした罪深さも直視して、ただちに軍を撤収させなければならない。


国民軽視が目に余る

 
自民党の政治資金規正法違反事件で、東京地検特捜部は松野博一前官房長官らを任意聴取した。
議員側へのキックバック(還流)の金額などを記した一覧表が作成されていた疑いも浮上する。 事実であれば、派閥の組織的な関与や計画的な裏金処理を裏付ける手がかりになるのではないか。

 
岸田文雄首相には党総裁として実態を徹底解明し、国民に説明する責務があるが、その姿勢は感じられない。国民軽視も甚だしい。
それでなくても国民はこの1年間、岸田政権の政策に振り回されたり、疑念を深めたりしてきた。

 
一例が健康保険証のマイナ保険証への一本化だ。なぜそれが必要か疑問は拭えない。やぶから棒に所得税減税も飛び出したが、選挙対策ではと国民は見透かした。
物価高は依然家計に重くのしかかり、実質賃金は直近の調査で19カ月連続のマイナスである。

 
政治がなすべきは国民の暮らしに目を凝らし、改善の道筋を描くことだ。防衛費を増強して緊張を高めるのが取るべき道ではない。
LGBTなど性的少数者への理解増進法は成立までに修正が加えられ、差別解消の理念が損なわれた。多様性を尊重する社会の実現に不断の議論が欠かせない。


地方は「従う」存在か

 
国は地方の自治を尊重する
憲法がうたう理念だが、岸田首相の政権運営には冷ややかな態度が目についた。一つは福島第1原発の処理水の海洋放出だ。漁業関係者らが強く反発していたが押し切った。

 
米軍普天間飛行場(沖縄県宜野湾市)の名護市辺野古移設を巡り、国は工事の設計変更を県に代わって承認する代執行をした。
来年1月中旬にも軟弱地盤の改良工事が始まる。反対する沖縄の民意を踏みにじる暴挙と言え、断じて容認することはできない。

 
高レベル放射性廃棄物(核のごみ)の最終処分場選定に関する、後志管内寿都町と神恵内村での文献調査は開始から3年が過ぎた。
交付金で最終処分事業へ誘導する手法は問題が多く地域の分断も招く。仕切り直すべきである。

 
来年の通常国会には国の権限拡大につながる地方自治法改正案も提出される見込みになっている。
国と地方の関係は上下・主従ではなく対等・協力だ。国の強権的な振る舞いに目を光らせたい。