柏崎刈羽原発 不安残る運転禁止解除


2023
1228 北海道新聞

 
テロ対策不備を受けた東京電力柏崎刈羽原発に対する事実上の運転禁止命令について、原子力規制委員会が解除することを決めた。
2年前に社員が同僚のIDカードを使って中央制御室に入るなどずさんな管理が発覚したが、検査で改善を確認したという。

 
福島第1事故の当事者である東電が再び原発を動かす資格があるのか不信感は拭えない。規制委も6年前に「経済性よりも安全性追求」など七つの約束を守ることを適格性の条件としたはずだ。
 柏崎刈羽では今年も薬物検査で陽性反応が出た社員を誤って防護区域に入れるトラブルなどがあった。地元に不安は残るが問題視せぬ規制委の対応は理解しがたい。

 
再稼働には知事の同意など地元手続きが必要だ。県議会も住民の声を聞き議論を尽くしてほしい。
 規制委はきのうの会合で東電が問題発生時でも「自律的に改善できる仕組み」を構築したと判断、荒天時の対応なども今後の検査で確認することを申し合わせた。

 
山中伸介委員長は「継続的な改善を求める」と強調している。
とはいえ司令塔となる社長直轄のモニタリング室は今年5月に設置したばかりだ。効果を見定めるには早すぎるのではないか。今月上旬に開かれた地元住民の会合では「東電の不祥事、トラブルの内容を思い起こすと到底納得いかない」との声も出たという。

 
6年前の七つの約束では「地元の要請に真摯(しんし)に向き合い」との文言がある。規制委や東電は時間をかけ誠実に応えるべきだった。
一方で福島事故の処理費用は従来より1・9兆円増え総額23・4兆円になるとの政府試算も今月明らかになった。賠償金額が基準見直しや処理水放出による風評被害の影響で増えるのが要因である。

 
収益強化のため東電が柏崎刈羽再稼働を急ぎたい思惑もあろう。だが福島では配管洗浄などで作業員の被ばくが相次ぎ、安全対策や管理体制には疑問符が付く。
廃炉の資金確保のために再稼働を強行してしまえば、危険と隣り合わせの原発依存が続くだけだ。

 
岸田文雄政権は昨年末に新たなエネルギー政策を示し、60年超の運転延長など原発積極活用にかじを切った。柏崎刈羽は首都圏の重要電源として早期運転を見込む。
国際情勢混迷や円安でエネルギー価格は上昇し、目先の電力供給に懸念もあろう。だが福島事故の反省から設立された規制委には高い独立性が求められる。政権に迎合する姿勢では存在価値はない。