電気料金ショック「オール電化」裏目、月7万8千円 全国最高値の道内さらに上がる?
2023年3月21日 北海道新聞
全国で最も高い電気料金は一体どこまで上がるのか―。北海道電力が、道内の一般家庭を中心に約240万世帯が契約する規制料金について、6月から平均34・87%値上げすることを経済産業省に申請しました。
認められれば、標準世帯の料金は月2838円高い1万1700円になります。2014年11月以来となる大幅値上げは、ただでさえ物価高に苦しむ家計への追い打ちになるのは確実です。生活防衛につながる策はあるのでしょうか、2回に分けて探りました。
「えっ! うそでしょ! こんなに払っていけるのだろうか」。北広島市のパート従業員の女性(50)は、1月の電気料金の請求書を見て、驚きました。請求額は7万8839円。1年前の同じ月から2万5千円も増えて、毎月の住宅ローンの支払いよりも高くなってしまったのです。
女性は夫と高校生の子ども2人と4人暮らし。08年に建てたオール電化の一軒家に住んでいます。電気料金の値上がりで、この冬は蓄熱暖房をなるべく使っていません。ポータブルの灯油ストーブを利用したり、夕方や明け方は多少暗くても電気を付けるのを我慢したりもしてきました。それにもかかわらず、7万円を超える電力料金には大きなショックを受けました。
自分へのご褒美にと、時々買っていたスイーツは買えなくなりました。女性は「とにかく小さな我慢が増えた」とため息を漏らします。電気料金の急激な値上がりは、日常生活から潤いを奪っただけではありません。女性は「このままでは生活が成り立たなくなるかもしれない」と不安を募らせます。
一生住むつもりで建てた家ですが、「この際、手放して賃貸に住もうか」とも考えるようになりました。21年に年間35万円だった電気料金は22年に43万円に。今年6月以降、北電が値上げすれば、負担はさらに増します。女性は「値上げ分を簡単に払えると思わないでほしい。北電は自分たちの都合を押しつけてばかりでなく、支払期限の延長なども考えて」と訴えています。
電気料金は契約電流(アンペア数)で決まる「基本料金」に、使った電力量に応じて増える「電力量料金」、太陽光発電などを普及させる「賦課金」の合計で決まります。このうち電力量料金には、石炭や石油など火力発電所で必要な燃料の価格変動を反映させる「燃料費調整額(燃調)」が含まれています。
この燃料価格の急激な上昇が、電気料金の値上げを余儀なくさせることになりました。ロシアのウクライナ侵攻など国際情勢の緊迫化によって、海外炭や液化天然ガスは高騰が続き、昨年8月には燃調によって引き上げられる額の上限に達してしまったのです。
北電は昨年12月、道内の一般家庭の約25%となる80万世帯が契約し、電力会社が裁量で料金を決められる自由料金について、上限を撤廃。本来割安のはずの自由料金が、一般家庭の約75%を占める約240万世帯が契約する規制料金よりも高くなる逆転現象が起きてしまいました。その結果、この北広島市の女性のようにオール電化住宅を中心に電気料金が大幅に上がり、衝撃が広がっているのです。
さらに北電は、今年6月には自由料金を約13%値上げするとともに、規制料金についても平均34・87%値上げすることを経済産業省に申請しているのです。
北電の藤井裕社長は値上げ申請を発表した1月末の会見で、急速に財務状況が悪化しているとして「電力の安定供給を継続していくため、心苦しいが値上げをお願いさせていただく」と理解を求めました。北電を含めると東京電力ホールディングスや東北電力、中国電力など全国に10ある大手電力会社のうち、7社が平均28~45%の値上げを申請しており、電気料金の値上げは全国的な問題でもあります。
ただ、11年の東日本大震災後、3回目の大幅値上げは北電だけ。さらに、今回の値上げ幅は、1970年代に襲い、大きな社会問題ともなった2度の石油危機並みの水準となります。わが家の電気料金はどうなるのだろうか。北電と規制料金で契約する千歳市の会社員木村義貴さん(50)は身構えます。
妻、アルバイトと専門学校生の子ども2人との4人暮らし。1月の電気代は2万2千円で前年同月より2千円増えました。照明をこまめに消すことを意識していますが、犬1匹、猫3匹を室内で飼っており、ペット用の電気ヒーターは使わざるを得ないといいます。灯油やガスなどを合わせると光熱費全体では6万円を超えてしまいました。
2月は政府の補助で電気代は1万円台に下がりましたが、この政府補助は10月には半減され、11月には終了する予定です。木村さんは「政府の補助がなければ、来冬の電気代は月額3万円近くになってしまう」と今から心配しています。家族4人とペットと暮らす千歳市の会社員木村義貴さん。冬場は電気や灯油の暖房を使わざるを得ないという
少しでも電気料金を抑えるためには、どうすれば良いのでしょうか。まず思い浮かぶのは、北電以外の電力小売会社に契約を切り替えることです。16年の電力小売り全面自由化以降、割安な電力料金を打ち出してきた「新電力」への契約変更です。
新電力で道内最大の北海道ガス(札幌)の電力契約数は約23万件。契約者数は「着実に増えている」(担当者)といいます。北電の規制料金で一般的なプランの「従量電灯B」(標準世帯は30アンペア、月230キロワット時使用)に該当する北ガスの「従量電灯Bプラス」の基本料金は北電と同じですが、電力量料金の1キロワット当たりの単価が最大1円違います。これで北電より月額で3%ほど安くなります。
さらに電気に加え、給湯や暖房などのガス契約するとさらに3%ほど割引となり、合計で月額料金が最大6%安くなるといいます。ただ、新電力にも値上げの動きがあります。いちたかガスワン(札幌)などが設立した「エネワンでんき」(東京)は、5月検針分からの値上げを決めました。北電の従量電灯Bにあたるエネワンスタンダードプランの標準世帯(30アンペア、255キロワット時使用)で、約21%の値上げとなります。
同社は「企業努力を重ね価格維持に努めてきたが、燃料価格の高騰分を吸収できる域を超えている。苦渋の判断をした」と言います。契約数は道内で約4万8千件。「燃料高騰で以前ほど北電との価格差を出せない状況」が続いており、ガスや灯油とのセット割引販売に活路を見いだす考えです。
燃料高騰は新電力にも大きな影響を与えています。北電と異なり自前の発電所を持たない大半の新電力各社は、個別に契約して電力を仕入れたり、卸電力市場から電力を購入したりしています。ただ、燃料や卸電力市場の価格が高騰している現在の状況では、本来割安な電気を提供するはずの新電力も価格を抑えられなくなっているのです。
北電の値上げが行われる6月以降、新電力も含めすべての電気料金が出そろってから、どの会社のどのプランが自分に合っているか判断するのも選択肢の一つでしょう。それでも以前のように新電力に対し、北電よりも顕著な割安感を求めるのは難しいかもしれません。そうした中、今後の電気料金を見越して思い切った設備投資をする動きも出てきました。
コメント
コメント一覧 (4)
まず自助努力を十分してから値上げを撤回すべきではないのか。
国民よいつまで黙っているの‼️
立ち上がるべきとき今しかないのではないか
若者よ立ち上がれ‼️
sinnpi2019
が
しました
sinnpi2019
が
しました