山田真貴子内閣広報官が育鵬社の教科書に“男女平等の象徴”として登場! 安倍首相の写真を15枚も掲載の極右団体主導の公民教科書

2021.02.27 リテラ


菅義偉首相の長男である菅正剛氏ら東北新社の幹部から一晩で7万円を超える高額接待を受けていた山田真貴子・内閣広報官。当時は総務省総務審議官という立場にあり、さらには情報流通行政局長時代には正剛氏の事業に便宜供与をおこなった疑惑もある。こうした贈収賄の疑いさえある不正行為をおこなっていたというのに、反省する様子をほとんど見せずその職に居座る傲岸ぶりにはあきれ返るほかはない。

ところが、この山田内閣広報官がなんと、教科書に写真付きで掲載されていることがわかった。掲載したのは、あの育鵬社が発行する中学校の公民の教科書。法の下の平等を定めた憲法14条に関連して、男女平等などについて学ぶページに、なぜか、山田氏が2013年、当時の安倍首相の秘書官に抜擢されたことが紹介され、「憲政史上初の女性首相秘書官」というキャプション付きで、山田氏が安倍首相から辞令を受け取る写真が掲載されているのだ。

たしかに、首相秘書官となった女性は山田氏が初めてかもしれないが、政府のもっと重要な役職に就いた女性はほかにもいる。にもかかわらず、なぜ、安倍政権で首相秘書官になっただけの山田氏を「男女平等の先駆け」のように扱ったのか。

答えは簡単だ。これが「育鵬社」の発行する教科書だからである。周知のように育鵬社といえば、歴史修正主義団体「新しい教科書をつくる会」の内紛から派生した「教科書改善の会」の教科書を発行するために、フジサンケイグループの扶桑社が設立した教科書出版会社。

同社発行の教科書は、歴史・公民とともに安倍政権が設置した私的諮問機関・教育再生実行会議の委員である八木秀次氏はじめ右派人脈が執筆し、歴史修正主義や戦前回帰、保守思想に偏った記述が多数盛り込まれている。

たとえば、歴史教科書では、太平洋戦争について「米英に宣戦布告したわが国は、この戦争を『自存自衛』の戦争としたうえで、大東亜戦争と名付けました」と当時の政府見解を借りて、戦争の正当化とも取れるような解説を展開。日本国憲法発布についても、わが国が独立国家として国際社会に責任ある立場に立つようになると、憲法改正や再軍備を主張する声があがりました」などと、改憲を誘導する解説を加えた。

また、公民教科書では、冒頭に差別主義者の曽野綾子が「人は1つの国家にきっちりと帰属しないと、『人間』にもならないし、他国を理解することもできない。」と主張するコラムを掲載。反進化論の疑似科学である「サムシング・グレート」や捏造された偽史であることが証明されている「江戸しぐさ」を紹介していた。

さらに、育鵬社の公民教科書が異様なのは、当時の安倍首相の存在がこれでもかとばかりにアピールされていることだ。教科書をめくると、与野党での国会議論の様子、国会内閣総理大臣指名などなど、安倍首相の写真が次々出てきて、その数、なんと15枚! 時の首相の写真をこれだけ掲載した教科書というのは前代未聞だろう。

■育鵬社の教科書は安倍氏が全面パックアップ 山田氏のクローズアップも安倍PRの一環

しかし、それも当然で、この育鵬社の教科書、そもそも安倍氏が全面的にバックアップして誕生したものなのだ。

この教科書が初めて出版されたのは2011年。主導したのは、教育再生会議委員の八木秀次氏だったが、最初の教科出版記念シンポジウム「日本がもっと好きになる教科書誕生」では、当時、野に下っていた安倍氏が登壇。東京書籍の教科書を名指しで左翼的と批判したうえで、こう高らかに宣言した。

「私が安倍政権時代になしとげた教育基本法の改正、この教育の目標をきっちりと受け止めて今回、教科書をつくっていただいた。それが育鵬社の教科書であると確信を持って申し上げることができるわけであります」

ようするに、安倍氏のバックアップを受けて生まれた育鵬社の教科書は、第二次安倍政権下の教科書改訂で、安倍氏の政治宣伝のための教科書と化したのである。男女平等を解説するページで山田氏をクローズアップしたのも、おそらくその延長線上で出てきたものではないか。

そもそも、育鵬社の教科書をつくっている「教科書改善の会」の思想は、女性の社会進出や男女平等と相容れるものではないが、文科省の指針でふれざるをえない。そこで、山田氏ならば安倍首相の功績をPRすることになると考え、首相秘書官に採用されたにすぎない山田氏をあたかも「女性の社会進出の象徴」として無理やり入れたのだろう。

何から何まで、安倍サマがらみのオンパレード。まるでどこぞの独裁政権の国の教科書のようだが、しかし、これが当時、安倍政権下で推し進められていた教育右傾化の正体なのだ。そう考えると、今回の山田氏の高額接待問題は菅首相の身内による汚職政治の実態を暴いたと同時に、安倍首相時代にいかにトンデモなことがおこなわれていたかを証明することになったといえるだろう。