「統計不正」など朝飯前 バレなきゃ何でもやる安倍政権

2019/01/28 日刊ゲンダイ 

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厚労省による「毎月勤労統計」の不正問題は、もう底なしだ。

なにしろ、不正の実態を調査する特別監察委員会も不正をしていたのだから、ブラックジョークである。ヒアリングした人数は37人だったのに69人と嘘をつき、しかも、身内である厚労省の職員がヒアリングを行っていた。さすがに「どこが第三者による調査なのか」と批判が噴出し、検証をやり直すことになったのだから話にならない。

本来「毎月勤労統計」は、従業員500人以上の事業所をすべて調べることになっていたが、厚労省は2004年以降、勝手に東京都分を抽出調査に変えていた。しかも、全数調査に近づけるデータ補正をしていなかったため、賃金が低く出る不適切な数値が15年も続いた。

最大の疑惑は、昨年1月からこっそり全数調査に近づけるデータ補正を開始していたことだ。しかも、調査対象を給料が高めの事業者に入れ替えていた。その結果、賃金の伸び率がハネ上がっている。ちょうどこの時期は、安倍首相が経団連に「3%の賃上げをお願いしたい」と要請するなど、賃金アップにシャカリキになっていた頃である。

突然、データ補正を行い、調査対象を入れ替えたのは、アベノミクスが「賃金アップ」という成果を上げているように偽装するためだったのではないか。それ以外、理由があるのか。

それにしても、安倍政権によるデータ偽装は、ヒド過ぎる。

財務省による公文書偽造、防衛省の日報隠し、外国人技能実習生を巡る法務省の不正集計、障害者雇用の水増し……と次から次だ。「毎月勤労統計」の不正など、朝飯前だったに違いない。

ハッキリ分かったのは、この政権は「バレなければなんでもやる」ということだ。法大名誉教授の五十嵐仁氏が言う。

「安倍政権の政策づくりはアベコベです。本来は、実態を調べ、データを分析し、事実に即して政策をつくるものです。ところが、安倍政権の場合、まずやりたい政策が先にあり、その方針に合うデータを無理やり用意している。

『裁量労働制の拡大』は典型です。厚労省が所管する団体が行った調査では“裁量労働制の労働者の労働時間は長い”となっていたのに、そのデータは採用せず、数字を加工してまで“裁量労働制の労働者の労働時間は短い”というデータをつくり上げている。自分がやりたい政策を実現させるために、数字までいじっているのだからヒド過ぎます」

まさに「数字は嘘をつかないが、嘘つきが数字を使う」の構図である。

平気で嘘をつく安倍首相が元凶


「毎月勤労統計」の不正について、安倍は他人事のような顔をしているが、厚労省を脅してでも「賃金アップ」という成果を手にしたかったのは間違いない。

二言目には「GDPは過去最高を更新」「有効求人倍率が改善」などと、アベノミクスの成果を口にしているが、肝心の「賃金」がアップしないことが、最大の弱みだったからだ。

本当に安倍周辺は、「不正問題」に関わっていないのか。怪しいのは、昨年1月、厚労省がこっそりデータ補正を開始し、調査対象を給料が高めの事業者に入れ替えた当時、厚労大臣は、首相から寵愛を受けている加藤勝信だったことだ。

もちろん、マトモな政権だったら役所に「不正」など命じないだろう。しかし、「バレなければなんでもやる」のが安倍政権である。

政治評論家の森田実氏が言う。

「東京五輪を招致した時、『福島原発の汚染水はアンダーコントロール』と口にするなど、安倍首相は平気で嘘をついている。年明け、NHKの日曜討論に出演した時も、『辺野古のサンゴは移した』と堂々とウソをついています。

嘘をついてはいけない、不正をやってはいけないというモラルが欠けているとしか思えない。トップがこれでは、日本の行政から道徳や倫理が失われてもおかしくありません。次々に不正が発覚するのは、トップの責任ですよ」

安倍政権がウソをついているのは、アベノミクスの偽装だけではない。膨れ上がっている防衛予算の根拠や、消費増税の大義も大ウソである。「日本の防衛に必要だ」と、アメリカから1基1000億円以上する陸上配備型迎撃ミサイルシステム「イージス・アショア」を2基購入することを決めているが、「日本の防衛に必要」は虚偽もいいところ。もともと「イージス・アショア」の導入は、北朝鮮のミサイルを迎撃するために必要という理屈で決まったが、北朝鮮とアメリカが急接近したことで、もはや必要はないはずだ。

消費増税の大義に挙げている「社会保障の財源確保」も、国民を騙すペテンである。消費税率をアップさせるのは、法人税減税の穴埋めのためだ。消費税が導入された1989年度と2016年度の国税規模は、約55兆円と変わらない。しかし、税収の構成比は大きく変化し、法人税9兆円減少/所得税4兆円減少/消費税14兆円増加となっている。つまり、法人税減税によって減った税収を消費増税で補っているのが真相である。

安倍政権のやっていることは、欺瞞の国民騙し、ほとんどゴロツキの手口である。

統計をネジまげるような国家は崩壊する


この政権では、都合の悪いことは隠す・ゴマカす・ウソをつくが常態化し、もはやなにを信用していいいのか分からなくなっている。

ここまで嘘をつきながら、安倍が平然としているのは、国民をなめ切っているからだ。「なにを言っても支持率は下がらない」と国民をバカにしているのは明らかだ。

どうせ安倍周辺は、「安倍シンパはなにをやっても支持してくれるが、安倍嫌いはなにをやっても支持しない。全肯定か全否定されるのだったら、味方になってくれる安倍シンパだけを相手にすればいい」と開き直っているのだろう。ほとんど、トランプ大統領と同じ発想である。

しかし、このまま公文書も政府統計も信用できないような政治を続けていたら、この国は崩壊してしまう。

「安倍首相の最大の問題は、ファクトに対して謙虚な姿勢がまったくないことです。恐らく、大切なのはファクトではなく、自分の主観なのでしょう。しかし、事実を事実として受け止め、事実に基づいて政治をやらないと、どんな政策もうまくいかない。アベノミクスが失敗し、外交が成果ゼロに終わっているのも、事実を見ずに勝手な思い込みだけで政治をやっているからでしょう。


誰が見たって、安倍首相はプーチン大統領に手玉に取られ、カネだけむしり取られているのに、本人は25回も会談したプーチン大統領との友情を信じ込み、北方領土が返還されると思い込んでいる。心配なのは、統計などの事実をネジ曲げると、国が崩壊する危険があることです。旧ソ連だけではありません。戦前の日本が、まさにそうでした。正確な数字に基づいて戦略を立てようとせず、勝てない戦争を続け、国が滅びた。公文書を改ざんするような安倍政権は、非常に心配です」       (五十嵐仁氏=前出)

森友事件や加計疑惑のように、国民の知らないところでなにをやっているのか分からないのが安倍政権である。バレなければ、公文書の改ざんだってやってしまう――。もう、日本は先進国ではなく、ゴロツキの国に成り下がっている。本当に国民は、このまま安倍政権を続けさせていいと思っているのか。