琉球朝日放送制作の「テロリストは僕だった~基地建設反対に立ち上がる元米兵~」は国民必見だ

(天木直人氏)27th Nov 2016 

私は労働党の名誉会員らしく、機関紙である「労働新聞」の無料配布が欠かさず送られてくる。労働党はあの共産党に対しても生ぬるいと批判するほどの左翼革命政党だ。

その政治イデオロギーには私は賛同しないが、送られてくる労働新聞に書かれている内容は、私が言ったり、書いたりしていることと、ほぼ同じだ。その労働新聞の最新号(11月25号)に、「テロリストは僕だった」という、琉球朝日放送が制作したテレビ番組の紹介記事を見つけた。

この番組は、すでにテレビ朝日でも放映されたというが、日曜の早朝4時半だったという。テレビ局が安倍政権におびえて自主規制をし、「国民の皆さん、見ないでください」と言っているようなものだと、その労働新聞の記事は書いている。

まちがいなくそうに違いない。日曜と言えども、毎日が日曜日である私は、早朝4時半には起きてテレビをあれこれ見ている。しかし、そんな私でも見落としたぐらいだから、まず誰も見ていないに違いない。 しかし、この労働新聞の番組紹介の記事を読むと、この番組は国民必見の番組である。

「テロリストは僕だった」という番組は、米国の退役軍人らでつくる平和団体「ベテラン・フォー・ピース」の証言による、米軍の実態を教えてくれる番組だ。番組の主役は元米軍海兵隊員マイケル・ヘインズさん(40歳)だ。18歳で入隊した彼は、20歳の時、沖縄の基地で勤務し、2003年のイラク戦争時には、バクダッドに派兵された。

その彼が語っている。「入隊すれば医療や教育の手厚い特典がある。退役後も住宅や仕事を提供する。奨学金で大学にも行ける」そんな勧誘にさそわれ、格好のいい制服を着て、英雄として讃えられる海兵隊にあこがれ入隊したという。いわゆる「経済的徴兵制」だ。

米国では軍隊が高校で堂々とリクルート活動しているらしい。しかし、入隊してみれば軍は約束をまったく守らなかったという。一度兵士になれば社会復帰は容易ではないという。「一般社会で狙撃兵にどんな就職先があるというのか」というマイケルの言葉は強烈だ。入隊したマイケルを待っていたのは、完璧な殺人者になるため、命令に従って任務を遂行するためのマシーンとなる訓練だ。

極めつけはバクダッドに派遣された彼の次のような証言だ。「テロリスが潜伏していると、毎日のように一般家庭などへの襲撃を繰り返した。民家のドアを爆弾で破壊し、突入すると、そこに居るのは一般人ばかりで、住民を壁に叩きつけ、子供は泣き叫び、恐怖で失禁する。そんな蛮行を繰り返し、地元の人にとってテロリストとは米兵であったことを悟った」 

この番組のタイトルはここから来ている。このマイケルの言葉は、私がレバノン大使を解雇され、講演で全国を駆け回っていた時に知り合いになった元ベトナム帰還兵アレン・ネルソンとの思い出を蘇らせてくれた。

やがてがんでこの世を去ったネルソンのあの時の言動を思い出すたびに、くじけそうになる私の反戦の気持ちは強まる。イラク戦争に反対したレバノン大使時代の私が蘇ってくる。いあ、まさに駆けつけ警護で日本は大騒ぎをしてる。

まるでままごとのようだ。そんな駆けつけ警護に奔走させられる自衛隊は気の毒だ。しかしその自衛隊が本物の軍隊になれば、気の毒どころか悲劇だ。そして、それは日本の悲劇でもある。そんな日本にさせないためにも、この番組は国民必見の番組だ。

何よりも安倍首相が見るべきだ。いや、安倍昭恵夫人が見て感想を国民に語るべきだ。その前に主人である安倍首相に考えを改めるように迫るべきである。