鳩山元首相“売国奴”批判の的外れ 「AIIB」日本参加への道

2016年6月28日 日刊ゲンダイ

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AIIB総裁が直接就任を要請(C)日刊ゲンダイ

AIIB(アジアインフラ投資銀行)の顧問となる「国際諮問委員会」(インターナショナル・アドバイザリー・パネル)の委員に、鳩山由紀夫元首相の就任が決まりそうだ。

「国際諮問委員会」は各国の首脳経験者10人程度で構成し、今秋に初会合を予定。時事通信によると、鳩山元首相はAIIBの金立群総裁から直接就任を要請され、これを快諾。「日本は進んだ技術力を持っている分野がたくさんあり、そうした協力をやるべきだ」と話したという。

AIIBは25~26日に北京で第1回年次総会を開催。開幕式で金総裁は新たに加盟を希望する国が24カ国に上ることを説明。これらの国すべてが参加した場合、AIIB加盟国は現在の57カ国から81カ国に増え、日米が参加するADB(アジア開発銀行)の67カ国・地域を上回る見通しだ。

AIIBとADBが現在、ライバル関係にあるとはいえ、双方の扉を固く閉ざしておく必要はない。AIIBの参加希望国が増えている状況なら、なおさらだ。鳩山氏の顧問就任は日本にとっても決して悪い話じゃないのに、ネットでは「売国奴」なんて鳩山憎しの声であふれ返っているからどうかしている。元外務省国際情報局長の孫崎享氏はこう言う。

「イギリス、フランス、ドイツをはじめ西側諸国のほとんどの国が参加しているAIIBに日本が参加しない理由は見当たりません。鳩山氏の顧問就任は、日本が将来、AIIBに参加する時のためのパイプづくりになる。歓迎するべき話でしょう。鳩山氏は中国の金融グループとも積極的に意見交換してきたので、AIIBも適任と判断したのだと思います」

これがまっとうな見方だろう。ネット住民は「中国主導のAIIBは怪しい」の一点張りで鳩山氏を執拗に批判しているが、「国際諮問委員会」は、中国主導との批判に対して透明性を確保するために設けるものだ。日本政府も主張があるなら、鳩山氏を通じて堂々と訴えればいい。それにAIIBは、すでにEBRD(欧州復興開発銀行)や世界銀行とも協調融資の協議を進めている。もはや中国主導だからといって、好き勝手できるワケではないのだ。

単なる「嫌中感情」だけで将来のAIIB参加の道を閉ざしてしまえば、窮地に追い詰められるのは日本なのだ。