TPP漂流決定米国にハシゴ外された甘利担当相の赤っ恥

2015
829日 日刊ゲンダイ


TPP(環太平洋経済連携協定)の漂流が決定的になってきた。26日に電話会談した安倍首相と米オバマ大統領は「引き続き連携していくことで一致した」と伝えられているが、ちゃんちゃらおかしい。7月末にハワイで開かれたTPP閣僚会合で、交渉に前のめりだった日本のハシゴを外したのは、ほかならぬ米国だったのだ。
 
閣僚会合に合わせて現地入りした「TPP交渉差止・違憲訴訟の会」共同代表の山田正彦元農相(弁護士)はこう言う。

「潮目が変わったのは、共同記者会見前日の30日。乳製品をめぐる交渉で、USTR(米通商代表部)のフロマン代表が、切りかけたカードを引っ込めたのです。これが大筋合意見送りの決定打になった。

製薬業界などから多額の献金を受けるハッチ上院議員(共和党)による電話攻勢や、会場のホテルに陣取ったTPP反対派急先鋒で、自動車業界を代表するレビン下院議員(民主党)のプレッシャーに負けた。かたや日本は重要5項目に挙げられていた牛肉、豚肉、乳製品に加え、自動車や新薬のデータ保護期間でも譲歩してしまった。参加12カ国のうち、カードを切ったのは日本だけ。次期大統領選を控えた米国の政治日程から逆算すれば、年内の大筋合意は極めて厳しい情勢になってきました」
 
ピエロを演じた甘利TPP担当相は「某国はいろいろ過大な要求をしている。頭を冷やしていただかないと」とニュージーランドをヤリ玉に挙げたり、「議長国の米国が十分な根回しをできなかった」と恨み節だったが、後の祭り。来年の参院選への影響を最小限に抑えるため、今秋の臨時国会に法案提出をもくろんでいた安倍首相の政治スケジュールはこれでパーだ。

「TPPが頓挫しても、TPP交渉参加条件にされた日米並行協議が残っている。これまで日本が切ったカードの中で米国に有利なものは当然のようにのまされることになるでしょう」(山田正彦氏)
 
安保法制しかり。国民を無視し、米国の顔色だけをうかがう安倍首相を総理の座に座らせ続けたらこの国は終わりだ。