安保法案を潰す秘策を話そう/小沢一郎 <第9回>一度に10万人が官邸を取り囲めば流れが変わる

2015年8月29日 日刊ゲンダイ

安保法案を阻止しようとしている方々と会ってお話しをしましたが、法案が衆議院を通ってしまったので、「法案成立は仕方ない」「勝負は来年の参院選だ」という方もいます。
 
私は「何を言っているんですか。今が勝負どころなんです」と言っています。今週は26日に安保法案の廃案を訴える学者と法曹関係者が大同団結する記者会見がありました。30日には安保法制反対の10万人デモが呼びかけられています。
 
本当に10万人以上が集まって、「安保法案反対」の声を上げれば、このうねりはますます大きくなります。10万人という規模を想像してください。10万人がさみだれ式にではなく、一度に永田町に集結すれば、国会周辺、首相官邸の周りを取り囲むことができます。
 
安倍首相はこれまで、安保法制反対の国民の声を無視してきました。そんな声は聴く必要がない。そういう考え方なんです、安倍首相は。しかし、10万人のデモが首相官邸を囲めば、違ってくる。目の前でやられたら、もう従来のような態度はとれません。
 
ただし、こうするには条件があります。バラバラと集まるのではダメなんです。これまでも反対集会はたくさんありました。でも、メディアは本気で取り上げない。小さい集会ではニュースになりにくいんです。ですから10万人が一気に集まる。一斉に声を上げる。これが必要で、そうすれば、この法案を阻止する可能性は絶対に高まるはずです。
 
それでなくても今、安倍政権からはどんどん、人心が離反している。内閣支持率は長期下落傾向だし、株価も暴落し、アベノミクスのメッキもはがれてきています。岩手県知事選では与党候補が直前に立候補を断念するという敵前逃亡までしました。健康問題で出馬取りやめというならまだしも、「勝てないからやめる」というのは前代未聞で、この一件だけで、もはや、与党の資格なしだと思います。あれだけ高い支持率を誇っていた政権がなぜ、こうなったのか。理由は2つあります。
 
ひとつは支持率が高い時に真摯に国民の声に耳を傾けず、居丈高になって権力的な政治運営をしたからです。地道に国民の信頼にこたえる政治をやってこなかったから、今のように落ち目になると何もかもうまくいかなくなる。
 
もうひとつは、戦後70年談話に象徴されるように安倍首相には「私はこう思う」というものがないんです。
 
過去の戦争については既に2度謝ったから後世の人にはもう謝罪させたくない。談話ではこう言っていましたが、全部、人の話で、「私は謝罪したくない」とは絶対言わない。常に本性、本音を隠してごまかしている。政治家として絶対やってはいけないやり方で、こういう政治では世の中を混乱させるだけです。それがようやく国民にも見えてきたのではないでしょうか。