小沢公判産経新聞記事での公判速報記事は、公判でのやり取りの詳細速記録の体裁をとっていながら、今回も意図的に編集していた。今回はNHK記事との違いでそれがすぐに明確に成るお粗末ぶりを露呈した。

小沢公判産経記事で意図的編集か-NHK記事との違い明確
産経ニュースの裁判速記記事はその速報性と細かさで重宝しているが、西松事件以来自らの主張に合わない部分を意図的に省略しているようだ。

1月10日の小沢裁判第12回公判において、江川紹子氏のTwitterの内容が産経記事に乗っていないことに気づかれた方もおられるだろう。今回はNHKが、全文ではないものの内容の詳細が記事を載せているので、比較してみると産経ニュースの記事では非常に重要な新情報が無視されていることが分かる。

まず、4億円の出所に関するNHKの記事からみてみると:
小沢氏裁判(3)4億円出どころは  NHK NEWSweb 1月10日 13時10分
http://www3.nhk.or.jp/news/html/20120110/k10015157561000.html

小沢元代表の弁護士は、土地を購入する際に用意した4億円の出どころについて質問しました。法廷での主なやり取りの概要は次のとおりです。

[弁護士]手元にあった4億の現金は、どういうことから小沢さんの手元に存在したのか?
[小沢元代表]私の場合、現金でずっと以前から所有していました。元の現金の多くは、両親からの不動産と現金の相続により取得したものです。自分で本を出して、印税などの収入もかなり得ました。40数年間、議員報酬も得ていました。自分なりにそれなりの現金を持っていました。[弁護士]相続した不動産はどこの不動産か? [小沢元代表]1か所ではなく、40何年も前の個人的なことなので、言う必要もないと思いますが、文京区湯島の自宅、ほかに都内の土地、また、水沢の自宅等々でございます。

[弁護士]湯島の自宅を売って、世田谷のを買って、差額が手元に残ったか? [小沢元代表]はい。たまたまバブルのはしりで、湯島は母の意向で転居したが、高く売れました。世田谷はまだそれほど高い値段ではなかったので、相当額の資産が残りました。 [弁護士]それの差額は手元に置いていた? [小沢元代表]はい、あります。 [弁護士]それ以外は?

[小沢元代表]ある銀行に預金していたもので、金融危機のときに解約して、そのときのお金を手元に置いていた。それと合わせて、親から譲り受けたものと合わせて手元に置いていました。[弁護士]それは、小沢さんがみずから銀行で、それらの資産について精査しようとしましたか?

[小沢元代表]はい。手持ちのお金だったので、この事件が起きて、事情を話すことになったので、手元のものは、客観的に話すことは不可能なので、金融機関に何か記録が残っていないか、調査を要請したが、古いことなので記憶にないと言われた。それでも頼んで、断片的に情報を入手した。しかし、入金出金欄にあるもので、私にも分からないものが多く、金融機関に聞いても分からないことが多かった。また、それでも、最小限自宅の売買で最後に残ったお金は、銀行の帳簿にもあったし、私が病気になったあとに家族名義で作った口座にあったお金は確認できた。それは、世間で知られているものよりも多いものです。

[弁護士]小沢さんはそれらの銀行関係の書類を持っていたんですか? [小沢元代表]何十年も前のことなので、私の記憶はまったくございません。[弁護士]検察の捜査でそのようなことを聞かれたか?
[小沢元代表]検察の捜査では、資料だけでなく、銀行なども捜査したような口ぶりだった。それは強制したような感じで言われた。[弁護士]検察は具体的なことを聞いてきたのですか?

[小沢元代表]どこで受け渡しがあったのかとも聞かれた。最終的に「ここじゃなかったんですか?」などというように、現実に受け渡した行員の話もとってきた、というようなことを言われたので、「ああそうか」と言ったと思います。

[弁護士]検事から、不正に秘匿した金とは、聞かれませんでしたか? [小沢元代表]ありました。それが目的で聴取をしたと感じました。[弁護士]金のやり取りについては、いわゆる不正な金が入っていたり、入るあてがあったのではという類の質問をされました?

[小沢元代表]検事はおかしな、ばかげた推論をするものだと思いました。ゼネコンからそのような不正な金は一切もらっていないと言いました。何問か質問がありましたが、私はそんなこと全くありませんと答えました。水谷建設の話も出た記憶がありますが、「私の秘書ももらったこともないと確信しています」と検事にも答えたと記憶しています。

[弁護士]検事が調べても、不正な金が何も出なかったのか?[小沢元代表]私と家内の資産、ほとんどすべてを調べ尽くしていると感じた。(前田元検事の)証言で、ゼネコンを捜査しても何の不正な金もないと証言しています。いずれにしても、そのような不正な金は一切もらっていないと答えました。私の答えに、検事は特別の反論はありませんでした。

[弁護士]ゼネコンからの金はもらってないのか? [小沢元代表]はい。

[弁護士]新進党の解体など、政党の離合集散の過程で、残った金が小沢さんの手元に来て、それが4億の原資になったということはあるか? [小沢元代表]政党の金はすべて公金なので、そのような個人でどうこうできるものではないと思います。 [弁護士]実際は? [小沢元代表]新進党で100億以上の金があった。各グループ、党は人数に応じて公正に分配しました。

[弁護士]自由党が合併したあとは?[小沢元代表]持参金を持っての合併でもないという意見があったので、同じ志を持つ同志のために使うことになりました。私自身は個人で一切、手をつけていません。

NHKの記事では、この後銀行からの4億円の融資のいきさつの内容になります。

一方、産経ニュースの同じ4億円の出所に関する記事では:
【小沢被告第12回公判(3)】4億円原資は「相続」「印税」「議員報酬」で現金保有 「銀行も分からない」産経ニュース 
産経の記事では前半に土地購入の経緯について書かれているが、NHKの記事との比較のため後半の4億円の出所についての部分のみを表示する。

 《資金管理団体「陸山会」の土地購入をめぐる虚偽記載事件で、政治資金規正法違反罪で強制起訴された民主党元代表、小沢一郎被告(69)の第12回公判は、弁護側から小沢被告本人に対する質問が続いている》...(投稿者による省略)
... 《質問は購入資金となった4億円の原資に移る。ゼネコンからの裏金との指摘もある原資について、小沢被告はこれまで「政治資金」「銀行融資」などと、たびたび説明を変遷させており、詳細不明のままになっている》
 
弁護人「次のテーマは4億円という手元の現金です」
 被告「はい」 弁護人「(4億円は)どういうことで存在したのでしょう」 被告「私の場合は、私だけじゃないかもしれない。ずっと以前から現金で所持していた。多くは両親からの不動産、現金を相続したもの。自分自身も本を出してみたりして、印税などでかなりの額を手にしました。40年間の議員報酬をいただいていたので、それなりに保有していました」 弁護人「相続したという不動産はどこのものですか」  被告「これも1カ所ではなく、40年前のことで言うことはないと思って言っていませんでしたが、(東京都文京区)湯島の自宅や都内の土地、郷里の(岩手県奥州市)水沢の土地等々」 弁護人「湯島の不動産を売って、(東京都世田谷区)深沢の土地を買った差額は手元に残りましたか」
 
被告「バブルの走りで、湯島の自宅は高く売れました。これは母親の意向なんですが。世田谷区の土地はこれほどの金額ではなかったので広く買え、相当額を手にしました」 弁護人「差額は現金で所持していましたか」 被告「もちろんあります」  弁護人「他にまとまった金額は?」  被告「銀行に預金していたものが。金融危機のあたりに解約して手元に置いておきました。親から譲り受けた現金も手元に置いておきました」
 
弁護人「今回、小沢さんの方で、銀行の資料を精査して確認されたことは?」  被告「はい。かなりの部分は手持ちで持っていましたが、事件が起きて事情を話すことになったので、手持ちの金を客観的に証明不可能なので、金融機関に何か残っていないか要請しましたが、古いので記録がないとかで出してもらえませんでした」  「それでも、しつこく頼んで、断片的に入手した記録の中でも、入金出金の数字でも記憶にないものもありました」
 
「銀行も分からないということで、金融機関の帳簿上の数字は明らかにすることができないが、最小限、自宅の売買で最後に残ったお金は銀行の帳簿にありましたし、私が病気になったあと、家族名義で預金していたものもありました」 「問題になったもの(4億円)よりも多くありました」
 
《小沢被告は言葉を選びながら、ゆっくりとした口調で答え続ける》
【小沢被告第12回公判(4)】《資金管理団体「陸山会」をめぐる虚偽記載事件で、政治資金規正法違反罪で強制起訴された民主党元代表、小沢一郎被告(69)の第12回公判は、小沢被告に対する弁護側の質問が続いている》
 
《法廷では、弘中惇一郎弁護士が土地購入をめぐる4億円に関して、検察官からの聴取の状況を尋ねている。小沢被告は時折、首をひねって記憶を呼び起こしながら、すらすらと答えていく》
 弁護人「検察官の質問時に銀行の資料は手元にありましたか」  被告「何年も前から何十年も前のことなので、記憶がありません。質問されて、どういうことか頭をひねる中で、こうだったんじゃないかといわれたこともありました」
 
弁護人「検察官は具体的に金額を上げましたか」  被告「はい。それもありました。どこで受け渡しがあったのかも聞かれました。記憶がないので、あれかな、これかなとやり取りをしましたが、『(検察官は)最終的にここじゃなかったのか』と。そうかもしれないと答えたことがありました」  弁護人「調書を見ると、具体的に銀行から(金を)おろしたとの記載があるが、これは小沢さんの方から口に出したのですか」  被告「はい。検察はすべてを知っている風情でした。私は全く記憶していなかった。検察官の誘導で『そうだったかもしれません』と答えたと思います」 

弁護人「この金はおかしいという追及はありましたか」  被告「ありました。不正な金が入る当てがあったんじゃないかと。本当におかしな、ばかげた質問があったように思います。水谷(建設からの不正献金疑惑)の話も出たように記憶していますが、私どもの秘書がそんなものをもらったことはないと確信していると言いました」

この後、産経ニュースは4億円銀行融資のいきさつの経緯になります。

以上記事比較から分かるように、産経記事ではNHK記事の同じ部分の半分以下しか掲載しておらず、しかも新しい情報と見られる部分が報道されていないことが分かる。その内容は、検察による銀行融資の捜査状況や誘導尋問の実態、新進党解体時の資金分配についてであり、今までの大手メディア報道の内容に反するものとみられるので、産経は意図的に編集したとしか見れないのではないか。
速報性が高い、詳細だからと言って、産経では事実報道とは程遠く何も信頼できないということを自ら証明してしまったようだ。